ベテラン刑事菅沼の胸糞事件ファイル
投稿者:ねこじろう (138)
『刑事さん笑っちゃうでしょ。
実際に面倒みてるのは、この私だったのにねえ。
その時私ね、、フフ、、なぜだか急に昔見たニュース番組を思い出したんです。
ある外国で起こった戦争で武器として使われた化学兵器の影響を受けた妊婦の女性から生まれた、首が二つ並んだ兄弟の姿を。あの二人いつも一緒だからか、幸せそうな笑顔をしてたんですよ。
刑事さん、わたしね、その時すごく素敵なアイデアを思い付いたんですよ』
『アイデア?』
『そうですそうです。
そんなに彼が義母さんが好きなら、いっそのこと一緒にしてあげたらいいんじゃないかってね』」
唖然とした表情で聞く大島を横目に、菅沼は続けた。
「女はな深夜母親を車で轢いた後自宅に連れ帰り一旦大型のポリ袋に入れ二階にある母親の寝室クローゼットに隠すと、翌朝ご主人が会社に出かけた後ホームセンターに行く。
そこで鉈(ナタ)とビニールシートを購入し自宅に戻ると寝室の床にシートを敷き、そこで母親の両手両足そして毛髪の一部を鉈で切断したんだ。
そしてそれらを台所に運び包丁でさらに切り刻んで小分けしてタッパーに収納すると、不要な部分は庭に埋めた。
それから夕食の度に調理してご主人のおかずの中に混ぜ込んでいたということだ。
彼女はまたあの焦点の合わない二つの瞳を大きく開いたまま、俺に言った。
『主人たら大好物なビーフシチューの時は、肉をスプーンに乗せて今日の肉は特に柔らかくて最高って嬉しそうに微笑んでくれたんです。ああ、それとパスタの麺の中に髪の毛の束を混ぜた時も、フフフ、、、黒い麺というのは珍しいなと感心したように言ったんです』
奇しくも家宅捜索の日の前の晩まで女は、そんな料理をご主人に食べさせていたようだ。
その後女はスタンガンでご主人の意識を失わせると鉈で頭部を切断し、ベッドに横たえた彼の母親の遺体の横に置いたんだ。
女は手錠を掛けられ家をあとにしてパトカーに乗せられるまで狂ったように笑いながら「あなた良かったじゃない、愛するお母さんと一心同体になれて」と叫んでいた。
※※※※※※※※※※
カウンターの席にはいつの間にか数人の会社員らしきものが座っていた。
菅沼は目の前に立つ初老の店主にお銚子を頼み再び大島の顔を改めて険しい顔で見ると、口を聞く。
「でな女の取り調べをあらかた終えた頃には奥の窓からはもう西日が差していてな、聴取記録を最後まで読んだ後用紙からふと顔を上げた時、俺見えたんだよ。」
食べたとき気づきそうだけど、髪の毛を混ぜ込んだパスタは想像するだけでキモ。
面白かったです。
コメントありがとうございます━ねこじろう