ベテラン刑事菅沼の胸糞事件ファイル
投稿者:ねこじろう (147)
長編
2024/09/01
11:15
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「何をですか?」
大島が怪訝な顔で菅沼に尋ねた。
菅沼はお猪口を口に運び一口飲むと、怯えた様子で続ける。
「そこは目の前に座る女の肩越しに見える薄暗い取調室の片隅。
その天井辺りだったと思う。
そこに何だろう?黒い塊みたいなのが浮かんでいるんだ。
不思議に思って目を凝らした途端、ゾッとした。
それは頭が二つ並び胴体しかない奇妙な者。
頭髪を半分失い血だらけの老婆の顔の横にはオールバックの中年男性の顔が並んでいて、二人とも物凄い形相で女の背中を睨んでいたんだ」
そして菅沼と大島の間に息苦しい沈黙がしばらく続く。
すると大島が思い詰めた表情で口を聞いた。
「先輩、僕ね、実は母子家庭だったんです。
母親はまだ元気で隣町のアパートに独り暮らししてます。
二年前に結婚して去年にはローンで郊外に一軒家を購入したじゃないですか。
だからゆくゆくは母親を引き取ってから面倒を見ようと思ってるんです」
菅沼は大島の言葉を聞いた後、最後にこう言った。
「お前、くれぐれもお母さんのことを嫁に任せっきりにするなよ」
【了】
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食べたとき気づきそうだけど、髪の毛を混ぜ込んだパスタは想像するだけでキモ。
面白かったです。
コメントありがとうございます━ねこじろう