滅びし神々の黙示録
投稿者:kwaidan (17)
これは、宗教学に詳しい友人から聞いた話だ。
旧約聖書において描かれる神ヤハウェとフェニキアの神バールとの戦い。その背景には、ただの宗教的対立を超えた深い神話的構造が隠されている。友人は、この理解を深めるためには、旧約聖書に対抗するカナン神話の詳細を知ることが不可欠だと強調していた。
カナン神話の中心には、エルという名の最高神がいる。エルは豊穣と知恵を象徴し、その支配下に多くの神々がひれ伏していた。しかし、この安定は長く続かなかった。突然、若き神バールが現れ、エルの支配を覆すべく動き出したのだ。バールは暴力的な手段でエルを去勢し、権力の座から引きずり下ろす。これにより、カナン神話の世界は大きく変容し、エルの時代は終わりを告げた。
友人の話によれば、この神話的出来事は、旧約聖書におけるヤハウェとバール信仰との対立を象徴しているという。イスラエルの民がヤハウェの信仰を守り抜こうとする裏には、このような神話の影響が強く作用していたのである。
そして、友人はさらに驚くべき事実を語った。カナン神話に登場するエルは、旧約聖書において「全能の神」と称されるエル・シャダイと同一視される存在だという。この神話的構造がどのように旧約聖書に影響を与えたのか、そしてバールの反逆がいかにしてヤハウェとの戦いに繋がったのかを理解することが、旧約の真の意味を解き明かす鍵となるのだ。
この神話の構造を知らずして、旧約聖書を読み解くことはできない。友人の語ったこの話は、聖書の表面的な理解を超えた深淵に誘うものだった。
この続きは?
神ってこわいですね~
シャダイとはアッカド語で「山」を意味するようです。エル・シャダイは周辺の民族から「山の神」と理解されていたようです。【参照箇所: 列王記 上 20章23節】