14号室:ライン
投稿者:うずまき (21)
おれの元カノの過去話。
元カノはサオリって言うんだけど、高校の時に付き合ってた男がやばいヤツだったらしい。
当時、バスケ部だったその彼氏は高身長で所謂「細マッチョ」な体格。割と女の子に人気があったとか。
で、都内の同じ大学に進もうって話になったらしく、二人で受験したが彼氏は不合格でサオリだけ受かった。
本心で慰めようとしたサオリに対して、その彼氏は段々と嫌味が増えていった。
その後も
「休学しろ」とか、
「1人で東京に出るとか危ないからやめろ」とか、
「俺に悪いと思わないの?」とか、
「女のくせに学歴ばっか気にするの?」
「1年浪人して来年は絶対受かるから1年待て」とか…。
サオリはその彼氏に恐怖を感じ始めて、はっきりと別れを告げるでもなく東京に出て来た。
それからは毎日のようにLINEが。
少しでも既読や返信に遅れると「男がいるんだろ?」と責め立てる。サオリを繋ぎ止めたかったのか、「あの頃は楽しかった」「あの時は幸せだった」と思い出話ばかりが連なるように。
もうウンザリし冷めてしまっていた。電話はもちろんLINEが来ても既読さえつけなくなった。
そのうち今度はLINEと共にハガキが届くようになった。
掠れた黒マジックで大きく「どうした?」と書かれただけのハガキが週に何通も。
最初は大きく1度書かれていた『どうした?』がそのうち小さな文字になり、ハガキの裏面をびっしりと埋めた。
ドウシタ?ドウシタ?ドウシタ?ドウシタ?
ドウシタ?ドウシタ?ドウシタ?ドウシタ?ドウシタ?ドウシタ?ドウシタ?ドウシタ?ドウシタ?ドウシタ?ドウシタ?ドウシタ?ドウシタ?ドウシタ?ドウシタ?ドウシタ?ドウシタ?ドウシタ?ドウシタ?ドウシタ?ドウシタ?ドウシタ?ドウシタ?ドウシタ?ドウシタ?ドウシタ?ドウシタ?ドウシタ?
本当に怖かった。
聞けばその彼氏はすっかり引き籠もりになり、一切を遮断した生活をしていると言う。
ハガキは止まる事はなかった。
ある夜、サオリが自室のあるマンションに戻るとドアの前で何かが動いた。
ブヨブヨとした巨体がノロノロと立ち上がる。
背中にかかる程の長髪、伸びきったTシャツ、だらしなく飛び出た腹に留まるジーンズ。
それは引き籠もりの長さを示すように豹変した彼氏だった。30kgは増えただろう体型。そして肉まんに目鼻を埋め込んだような醜悪な顔。
そして一言。
「ドウシタ?」
怖すぎる!
イヤすぐる!