5号室:ウメボシ
投稿者:うずまき (21)
短編
2024/07/21
02:53
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残業のせいですっかり遅くなった。
電車を降りて最寄り駅を出て帰路に着く。
スマホで確認した現時刻は、もうすぐ日付を変えようとしている。
この時間になるとあまり人の行き来もなく、まだLEDに変わっていないままの昔ながらの古びた街灯が薄暗く道を照らしている。
それが妙に不気味で自ずと足早になる。
あの角を曲がればもうすぐ自宅のあるマンション。
そこまで来た時、電柱の側に立っている人影に気付いた。
このタイミングでの人影は正直言ってあまり気持ちのいいモノではない。
足早に通り過ぎがてらさりげなく目の端で人影の正体を確認した。
女だった。
何やらブツブツと呟いている。
「…ウ、メボ…シ……。」
『梅干??』
明らかにそう聞こえた。
「ウメェ…ボ…シ…、ウメボ…シィィ…。」
何故かわからないが、声を掛けてしまった。
別に見た目は普通だったからだ。
もしも何か困ってるならこんな時間に女性1人は危ない。
「大丈夫ですか?」
「ウメボ…シ…ィイ。」
「梅干がどうかしたんですか?」
「…メボ…シイィ…。」
再び聞こうとした矢先、急にその女が腕を掴んできた。尋常ではない力で。細い指先が腕に食い込んでくる。
「ちょっ、離して下さいっ。」
振り払おうと視線を向けたその手先は血塗れだった。
全ての指先にあるはずのモノがなかったからだ。
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うずまきさん、タイトルの付け方カッコイイ