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ヒトコワ

バクシマさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

私 そこに吊られていますから
長編 2024/07/18 13:36 5,317view

「はい、あのラーメン屋は〇〇ラーメンといいます。」
と正直に教えた。

そして、送信して数秒後、返信がきた
たった一言(ひとこと)

「特定した」

7月20日⑦
憂鬱な気持ちで目が覚めた。
決して筋トレによる乳酸の蓄積が原因ではない。
治療中の歯が痛みだしたからでもない。
バクシマ・・・奴だ。
思い返してみれば、奴と関わってから、妙な事が自分のまわりで起こっている。
「頭がおかしく」なりそうだ。
とはいえ、怪談朗読の生配信はしなければならない。
・・・そうだ、センシティブだ!!
怪異を遠ざけるには、スケベ・・・もといセンシティブが効くとされている。
俺は部屋にセンシティブを散りばめた。
その甲斐あってか、夕方まで妙なことは起きなかった。
・・・そして、生配信の時間となった。
意外にも、怪談朗読は順調に進んでいく。

だが、ある怪談を読んでいる最中のことだった。
ふと、本棚のあたりから、誰かの息づかいのような声がした気がした。

その瞬間、急に心臓を触られたような悪寒が全身を巡る。
なんだ?いまの感覚は?
そのとき 
ブルルルッ 机の端に置いた携帯が振動した。
いつもであれば、配信中に携帯が鳴っても無視するのだが、今は、何か胸騒ぎがする。
俺は、配信を一時中断して、携帯の画面を確認した。
ネットニュースの通知だった。
「速報 〇〇弁天神社で、
指名手配中のバクシマ ナニガシ が
鳥居に吊られているのを発見 
警察は周囲の状況から自殺と断定」
え、どういうことだ? あいつ、本当に死んだのか?
しかも
「この神社・・・うちのすぐ近くじゃないか」
何か、嫌な予感がする。
何か恐ろしい事が起きているのではないか?
俺は、恐怖で頭を掻きむしっていた。
しかし・・・ふと、何かが頭をよぎった。
俺は怪談サイトを開き、バクシマが先日投稿した怪談を読み直した。
色々とふざけた内容だが、
依然として、作品のタイトルだけは謎のままであった。

そのタイトルは
『私 そこに吊られていますから』
あらためて、ネットニュースを見返す。
たしかにアイツは、自分の怪談作品を、タイトルでオチにするのが好きな作風だった。
「・・・鳥居に吊られているのを発見・・・そういうことか・・・」
俺は、無意識につぶやいていた。
つまりアイツは、自ら首をくくり死ぬことで、ついでに人生最期の怪談作品も締めくくったのだ。
「まあ、オチとしては悪くなかったぞ・・・」
俺は、この頭のおかしい怪談好きの死を悼(いた)み、ひとり合掌した。
・・・さあ、怪談朗読の続きをやるか。
どうせなら、アイツの過去作を朗読してやるか。
きっとこれが、アイツにとっての鎮魂歌になるだろう。
「僕は笑ってないよ」「それは違うんじゃないかねえ」
この2作は、なにかと早合点しがちな頭のおかしい友人が、オチで、実は事象への解釈を間違えていたというのが共通の内容だった。
結局、この頭のおかしい友人とは実在したのだろうか。
いまはもう分からない。
だが、もう関係ないか。
それにおそらく、今日から俺には運気の良い日々が始まるだろう。
だって
バクシマはもういないのだから。
いない
いない
・・・間違って、いないよね?

5/6
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