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意味怖(意味がわかると怖い話)

綿貫 一さんによる意味怖(意味がわかると怖い話)にまつわる怖い話の投稿です

あの夏への扉
長編 2024/06/05 22:43 15,835view
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「なんもだぁ。
婆ちゃんも大往生だし、最期までしっかりしてたかんねえ。皆、笑って送ってやったよ。
そうそう、それよりねえ――」

伯母はいたずらっぽい表情を浮かべると、背後から何かを取り出す。
差し出されたそれは、古い絵日記だった。

「これは……」

手に取って、パラパラとページをめくる。
幼い子供の手による、絵と文字。
どれも見覚えがあった。
当然だ。

これは、自分自身が書いたものだったのだから。

「――ずいぶん、懐かしいものが出てきましたね」

「でしょう? 婆ちゃんの部屋を片付けてたらねえ、引き出しの中から出てきたんだよぉ。
爺ちゃんも婆ちゃんも、夏休みの度に洋ちゃんが来るのを、楽しみにしてたからねぇ」

§

§

子供の頃、毎年お盆の時期になると、私たち一家は母親の実家であるこの家へ、帰省をしていたものだった。

同じ学校の友達もいない。
漫画をたくさん置いている大きな本屋も、テレビゲームもない。
普段の生活の場とはかけ離れた環境であったが、私は毎年、ここを訪れるのを楽しみにしていた。

森に行けば、山ほどカブトやクワガタが取れる。
町を流れる小川では、面白いように魚が釣れる。
夜になれば、祖父に連れられ、田んぼに蛍を見に行った。
そして、ちょうどお盆の時期に行われていた、山の神社の夜祭――。

『洋ちゃんの手は、あっついねぇ』

『……の手は、冷たいね』

§

§

「――洋ちゃん、どうしたね?」

伯母が私の顔を覗きこんでいる。
どうやら少しの間、放心していたらしい。

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コメント(1)
  • 【吉良吉影!雪女に会う~少年時代 特別編~①】
    何となくこれを思ったw

    2024/06/07/06:48

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