正面に座る初老の医師の言葉に玲子は「新たな問題というのは何なんですか?」と尋ねる。
「まだ確定というわけではありませんので、あまり深刻に受け止めないでいただきたいのですが」
どこか遠回しに言う医師の態度に彼女は少しイラつきだしとうとう「すみません、結論だけ言っていただけませんか?」ときつめに言った。
すると医師は一度だけ軽く咳払いをすると続けた。
「ではお答えします。
息子さんは多分筋ジストロフィー症に罹患されていると思われます」
「え?筋ジス、、、それって何なんですか?」
聞きなれない病名に玲子が問い返す。
「この病気は遺伝子の変異で体の筋肉が徐々に壊れて、筋力が衰えていく病気です。進行すると呼吸困難とかに陥り死に至る難病です。ところで息子さんは普段の生活の中でつまずいたり転んだりすることはないですか?」
玲子はしばらく無言で俯いていたが、やがて「いいえ」と呟き静かに首を横に振ると険しい顔で口を開いた。
「先生、その病気って治るんでしょ?」
今度は医師の方が無言で俯き静かに首を横に振った後すぐ顔を上げると、
「いえ、進行を遅らせることは出来ます」
と慌てて言い訳するかのように言った。
それから二人の間に嫌な間がしばらく続いた後、突然玲子が立ち上がる。
そして正面に座る医師を上から睨みつけると
「どうして!?どうしてうちの息子がそんなことにならないといけないんですか!?
息子が一体何をしたというの!?」
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