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それからも満男はちょくちょく学校の帰りに女の家に立ち寄るようになる。
彼はその都度、女の手料理をごちそうになった。
だからそんな日は自宅に帰るのが遅くなっていたし、仕事から帰ってきて母親が作る晩御飯も半分以上残すようになる。
しかも顔色が悪くなり以前よりかなり痩せ、たまにトイレで戻したりすることもあって、とうとうたまりかねた母親の玲子はある日の晩御飯時に満男に尋ねた。
「あんた最近ちょっとおかしくない?食欲ないし顔色も悪いし、どっか体でも悪いの?」
「いや別に」
その日もご飯を半分以上残した彼はそう言って立ち上がると、さっさと食卓を離れる。
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それで息子の様子がおかしいことを不審に思った玲子は翌日、会社を早退すると小学校の校門の近くの電信柱に身を隠し満男を待ち伏せした。
下校のチャイムが校庭に鳴り響き、ぞろぞろと校門をあとにする学童たち。
しばらくするとランドセルをしょった満男も校門から出てくる。
玲子はばれないように注意しながら、少し離れた後方から息子の背中を追った。
やがて彼は住宅街の路地をとぼとぼ歩き進む。
そして何度めかの角を曲がり進んだあるところでピタリと歩を止めた。
─あんなところで何をしているの?
曲がり角から顔を出して息子の姿を見ていた玲子は不審に思った。
というのは満男が立っているところの前は、もう何十年も前に火事で焼失した家のあったところだったからだ。
彼は赤茶けた金属の門を開くと敷地に入っていく。
玲子は小走りでその門のところまで行き隙間からそっと中を覗くと、ハッと息を飲んだ。


























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