その手は胸や腹部だけでなく、いつしか下腹部までまさぐり始めていた。
さっきよりももっと快感が大きくなる。
「これはヤバいことになりそう」と思っていると、突然相手が口を重ねてきた。
しかも間髪を入れずに舌がねじ込まれてくる。めちゃくちゃ情熱なキスだ。
激しいキスと体中を這いまわる手に、次第に頭の後ろ辺りがジーンとしてくる。
口の中の舌は激しさを増し、まさに快楽に溺れそうだった。
ああ夢の中とはいえ、おそらくこのまま最後までいきそうだと感じた。
抵抗感もあるにはあったが、とてもそれに抗えそうにない。
いや、それよりももっとして欲しいと感じていると、激しかったキスがさらに激しさを増す。
だがなにかおかしい。
激しさを増したのではなかった。舌が口の中で、さらに奥に侵入しようとしていた。
「えっ」と思ったが、相手はかまわず舌をねじ込んでくる。
舌先が喉の奥にまで届き、口の中が相手の舌で一杯になった。
いまや口をいっぱいに開いて相手の舌を受け入れている形だ。
それはいつしか口をいっぱいに開かないと入りきれないほどの太さになっていた。
これが本当に舌？と感じながら、苦しさに耐えていると、食道の辺りに違和感を感じる。
相手がもっともっと体の中に侵入しようとしていると気付いたときに、急に恐怖が蘇ってきた。
はたから見れば、口を大きく開けた状態でお互いの口を重ね、はげしく頭をくゆらせている。
とても情熱的に見えただろう。
だが実際に口の中には、手首ほどの太い何かが入り込み、体の奥の方まで侵入しようとしている。
声も出せない苦しさのなか、激しい恐怖に駆られた。
いまや相手のそれは、食道を通過して、胸のあたりまで到達している。
しかも明晰夢だ。地獄だった。
これはいつもの夢に違いないと思いながらも、それでも脳はバグった状態でリアルにその感触を自分の脳内で再現してくる。
おかげで顎が外れるように痛み、また子供の腕ほどの太さの長い胃カメラが強制的に突っ込まれるような苦しさをリアルに感じていた。
「なんだこれ、もうやめてくれ」と思うが、体は動かせなかった。
さっきまでの快楽が嘘のように引き、喉全体が膨張し、圧迫され、なんとか鼻で呼吸をしている。
相手の手はいまだに体をまさぐっていたが、さっきまでの快感は消え去っていた。
たださきほどまでは体全体をひたすら触る感じだったが、いまは腹部、右の腹あたりをさするように触っている。
金縛りも続いていて、喉の痛みと苦しみに耐えるしかなかった。
怖い体験しましたね。