いちにち、いちみり
投稿者:太山みせる (35)
「さっきも言ったが、色坂がこんなにならなかったら、野村に逮捕をしてもらいたかった。だがもう無理だろう?」
吉見が残念そうに言う
「そうはいっても、このまま何もしない訳にはいかない」
「なあ野村、監視役が写真を撮ってボスに現状を見せたんだ。そうしたら、持って来いって言われたそうだ」
「そうか、ならばお前たちのボスが動く前に連れて行かないとな。たくさんの犠牲者がいるんだ。こいつだけ罪を償わないのは許せない」
正直、野村の心の奥には私怨もあった
「色坂はどんどん小さくなっている。明日はもっと小さくなり、明後日はそれ以上に小さくなる。日が経てば経つほどにな。果たして世間は、こいつを色坂として認めるのか?」
「うーん、それは……」
これからも小さくなるなら、裁判が終わる前に見えなくなっちゃうかもしれない
だが、警察官としての義務は果たしたい
「失礼!」
ひとこと言ってから、野村は色坂の写真を撮った
色坂の事件の担当刑事に友達がいる
彼宛に色坂を見つけたと、体が縮んだ理由の文章も入れて写メを送った
返事は電話できた
「頭がおかしくなったのか?すぐに病院に行け!」
それだけ言われて切られてしまった
「せっかく見つけたのにどうしたら良いんだ?」
野村は苦悶した
そんな野村に、吉見は静かに言った
「もう終わらせる。これ以上、人外になる前に色坂も死んだ方がましだろう」
「「えっ?」」
驚きの声を上げたのは野村だけではなかった
色坂も驚いていた
「おい何を言うんだよ?俺は死にたくないよ」
色坂の訴えを無視して、吉見は話を続ける
「今夜、偶然会ったお前は家族を守っていた。優しさは変わらないな、と思ったよ」
「家族を守るのは当たり前だ」
「……オレには家族がいない。だからその当たり前もないんだ。……お前のそんな姿を見た時、何だか幼い頃に死んだ親父を思い出したよ。もし親父が生きていたら、オレに何と言ってくれるかなと考えた。いや親父だけじゃない、オレの母親や色坂のご両親が生きていたら、全員もう終わらせろ、と言うと思う」
吉見の目からは涙が出ていた
ひきこまれた。
引き込まれました。
10ページもあったかと思うほどあっという間に読んでしまいました!怖かったです!
面白かった。展開がハラハラする。
すごかった。
投票はしましたが怖かったより面白かった、「せめて1m〜」のくだりで不覚にも笑っちゃいました。
吉見さんに幸あれ!