フロントもサイドもリアも全てのガラスは汚れており、車内をうかがい知ることは出来ない。
それでSはポケットからハンカチを出すと、フロントガラスの汚れを拭き取っていく。
そして徐々に車内の様子が見えだし全てが見えた途端、彼はあっと息を飲んだ。
運転席に一人助手席には二人、人らしき者たちが座席に体を預けるようにして座っていた。
だがよく見ると彼らはもう人ではなく、干からびた骸(むくろ)たちのようだ。
午後のけだるい朱色の陽光が、三人の黒く骨張った顔を浮かび上がらせている。
皆安らかな感じに瞳を閉じ、ぽっかりと呆けたように口を開いていた。
着ている洋服から判断すると運転席には中年の男性が、助手席には女性が、そして彼女に寄り添うようにして男の子が座っている。
男の子は、さっきSが追っていた子と同じような風体をしていた。
そして彼は3人それぞれの手元に視線を移した瞬間、胸の奥から熱いものがどっとこみ上げてきて涙が止まらなくなる。
運転席の男の左手首には助手席の女の右手首が、女の左手首には男の子の右手首が荒縄でしっかりと結びつけられていた。
※※※※※※※※※※
それから一頻り涙を流した後、Sは慌てて携帯を出すと警察に連絡をする。
その直後のことだった。
─カチャリ
唐突に車の後部ドアが開いた。
不思議に思いながら近付き恐る恐る車内を覗き込もうとした時だ。
いきなり真っ黒い手がその服を掴みそのまま引っ張りこむ。
そして彼がそのまま後部座席に倒れこむと同時にドアは閉じた。
車内には何だろう、むせ返るような不快なガスの臭いが充満している。
堪らず外に出ようと彼はドアを開こうとするが、びくともしない。
やがてSはぜいぜいと息をしながら激しく咳き込みだした。
























なかなか面白かったです。
こういう作品好きですね
ワクワクするタイトル
怖いというよりも悲しい
皆様、コメントありがとうございます。
とても創作の参考になります。
─ねこじろう