Sはレコーダーを地面に置きゆっくり立ち上がると、男に誘導されるようにフラフラと歩きだす。
だが砂利地を横切り立ち並ぶ木々の手前にたどり着いた時には、もう男の姿はなかった。
それからそこで彼は立ち尽くしたまま、じっと木々の狭間を眺めていた。
しばらく眺めているうち、彼はハッと息を飲む。
立ち並ぶ木々の狭間の奥まったところに、男の子がポツンと立っているのがぼんやり見えたからだ。
それは黄色い野球帽らしきものを被った白いTシャツに黒い半ズボンの男の子。
まるで陽炎のように微かにユラユラ揺れている。
Sは「お~い」と叫びながらその子の立っているところに向かって走りだす。
すると男の子は逃げるように木々の間をさらに奥へと走りだした。
懸命に呼び掛けながら小さな白い背中の後を追うS。
目前に次々現れる木々をすり抜けながら、彼はひたすら男の子を追い続けた。
すると突然彼は切り株に足を取られ、派手に前に倒れこむ。
「痛あ」と額を押さえて呻きながらゆっくり立ち上がると、そこは背丈くらいの草が密集している場所だった。
進路を塞ぐ草を左右にかき分けると、目前に忽然と一台の車の車体の一部が現れた。
※※※※※※※※※※
彼は驚いて足を止めると周囲を見渡す。
車がある位置は、彼が砂利地に行き着くまでに通った獣道の途中から数メートル立ち入った辺りのようだ。
どうやらこの辺りだけ木があまりなく、背丈くらいの草が生えているだけで車の侵入も可能のようだ。
車は完全に草に覆われていて、周囲からはその姿が見えない。
Sは草をかき分けながら車の周囲を歩いていく。
それは白の箱型のセダンのようで、あちこち錆や汚れがありタイヤはパンクしている。
どう見てもかなり長い年数の間放置されていた感じだ。


























なかなか面白かったです。
こういう作品好きですね
ワクワクするタイトル
怖いというよりも悲しい
皆様、コメントありがとうございます。
とても創作の参考になります。
─ねこじろう