儀式の呪縛
投稿者:まろ (12)
「じいちゃん…なんで死んじゃったの?そんなに病気悪かったの?治るって言ったじゃん!」
Mは子供のように泣きじゃくりました。
「え?嘘…なんで…そんなことが…」
いきなりMのぐしゃぐしゃな顔が豹変しました。驚きと怒りが混ざったかのような印象を私は感じました。
「…分かった…じいちゃんの恨み、俺が晴らすよ。必ず。」
Mは一言そう呟いて、持っていたライターでろうそくの火を3本つけてしまいました。私たち3人は唖然としました。Mが縁起をしているようには見えなかったからです。
「なにが…起きたの?」
初めてその沈黙を破ったのがAの発言でした。
「じいちゃんが…じいちゃんが俺に言ったんだ。自分はあの病院に殺されたって…恨みを晴らしてくれって…」
Mは再び泣き始めました。
「1人にしてくれ…すまん…今日のところは帰ってくれ…」
私たちはMにかけてやる言葉が見つからず、そっとMの家を後にしました。とても後味が悪い展開となってしまったので私たち3人は、Mのストレスだろうと言うことで結論づけてこの後に遊ぶのをやめて、それぞれの家へと帰りました。
それからと言うもの、Mは変わってしまいました。学校で会った時、Mはいつもと変わらないような雰囲気を出していましたが、性格が攻撃的になり、日を重ねるごとに冷淡になっていきました。私たちと話す時
「俺はあの病院は絶対に許さない。俺の研修先は絶対あそこにするんだ。あの病院に復讐する。」
と毎度のごとく言っていました。その後のMは人との関わりをなくすようになってしまい、友達が減っていきました。私とAとTはMを気にかけていましたが、病院実習、研修先の病院のマッチング、国家試験という大イベントを重ね、大学を卒業するとMとは疎遠になっていきました。連絡をしても全く反応がなく、Mの方から私たちを避けているのかもしれません。しかし、私たちは研修先の病院については卒業前にMから教えてもらいました。
Mの祖父が言っていたあの病院です。だから尚更Mと連絡を取りたいのですが、今でも全く反応がありません。そして私も、医者の忙しさに追われ、Mのことをずっと考えている暇もなくなりました。
数年後、その病院に行く機会がありその病院で働くMと同じ科(循環器内科だったはずです)の医者にMのことを聞きました。
「あー、Mですね。1年くらい前までここにいましたね。急にこの病院からいなくなっちゃったんですよ。自分でやめたのかクビになったのかは分かりません。ただ彼は看護師をはじめ色々な人から嫌われてましたよ。クビにされたんじゃないかって思ってますけどねぇ…」
Mのその後を知れたことは私自身とても驚きましたが、同時に後悔もしています。私があの儀式を決行しようと思わなければ、Mの未来は変えられたのではないかということです。私自身あの儀式については不審な点があると思います。
まず、あの儀式で呼ばれた霊的なものはMの祖父ではないと思っています。オレオレ詐欺にわざと引っかかりお金を援助するほどの人が病院に恨みを持ちそれをMに伝え、恨みを晴らしてほしいなどと言うわけがないと思っています。そして、Mはあの後ライターを自分で付けたはいいものの、あの手帳にかかれていた
「ありがとうございます。おかえりください」
という儀式の終了を告げる言葉を言っていませんでした。つまり、あの儀式はまだ続いていると思います… Mの祖父ではないナニかは、まだかえっていない…あいつは帰らずいまだMに付き纏っている…そう思うのです。
そして、問題はあの手帳と骨が厳重に人の手が及ばないであろう所に隠されていたことです。Mの両親は何ともないことからもしかしたらMの前に住んでいた人がその儀式を決行し、Mのような目にあってしまったのではないでしょうか。そして恐らく私の推測ですが、複数人でその儀式をやったと思っています。第三者がいないとその箱を封じることはできませんから…こうなったことを推測できなかったこと、面白半分で決行してしまった原因を作った私が悪いのです。後悔してもしきれません。私がMの人生を狂わせてしまったと思っています。それ以来私は、幽霊と言ったものが生理的に無理になりました。
私の話は以上です。
憑依されることで人格が変わるというお話は良く聞きますね
Mさんはどこに行ってしまったのでしょう。また、Mさんのご両親、ご実家は無事なのか、心配ですね