【M】心理クリニック
投稿者:ねこじろう (149)
そこには末崎が映っていた。
刑事が口を開く。
「三日ほど前なんですが、市内にあるアパートの一室で男性の変死体が発見されたんです。
親しい女性が本人と連絡が取れないということで不審に思い合鍵で開いて訪ね、発見したということでした。
まだ断定は出来ないのですが、遺体はそこの住人の末崎昌道さん43歳ではないか?と思われます」
「え?」
M医師が驚いた様子で刑事を見る。
刑事は一呼吸置くと再び喋りだした。
「なぜ発見された遺体が末崎さんではないか?と言っているのは、遺体の顔面部は元の容貌が確認出来ないくらいぐちゃぐちゃな酷い状態だったからなんです。
まるでバーナーか何かで直接焼いたかのように、顔面のほとんどが溶けて焼けただれていました。
もしこれが他殺だとすると、かなりの恨みを抱いた者の手によるものと思われます。
さらに詳しく調べると末崎さんらしき者の死亡推定日は多分4、5日前。つまり末崎さんがこちらの医院に訪れた翌日か翌々日辺りではないかと」
「いや、それはおかしいです。
だって今日ほんの30分くらい前に本人が診察に来て、おかげさまでと言って笑顔で帰ったところでしたから」
そう言ってM医師は真顔で刑事の顔を見る。
刑事は目を丸くして医師の顔を凝視すると、
「まさか、、そ、そんなはずは、、、
それは本当に末崎さんだったのですか?」と尋ねた。
M医師は真顔で軽く頷くと再び口を開く。
「はい。
でも刑事さんの話を聞いた後では先ほど訪れた男が果たして本当に末崎さんだったのか?
今となっては私自身も疑心暗鬼になってます」
結局、刑事は、再び末崎さんらしき男が医院に訪れることがあったら署に連絡してほしいと言って立ち去った。
※※※※※※※※※※
刑事が帰った後、M医師はただ呆然とした様子で一人応接室の椅子に座っていた。
─今日医院に訪れた、あの男、、、
風貌も話した内容も明らかに末崎さんだった。
それでは、アパートで見つかった変死体は一体誰なんだろうか?
逆にもし見つかった変死体が末崎さんだったとしたら、今日訪れたあの男は一体?
男はこう言った。
これでようやく新しい人生を踏み出すことが出来そうだと。
この言葉は一体どういう意味だったのだろうか?
気味が悪いですね、怖かったです((( ;゚Д゚)))