【M】心理クリニック
投稿者:ねこじろう (149)
「はい」
末崎はそう言ってガックリと首を項垂れた。
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結局M医師は彼に安定剤を処方すると、一週間後に再診に来るように言った。
末崎が立ち去った後、M医師は看護師に尋ねる。
「さっきの男の話、どう思う?」
「死んだはずの双子の兄が現実に現れて殺しにくるなんて、本当だったら恐ろしい話ですね」
「ははは、、そんなわけないだろ。
彼の目や表情見たかい?
あれは完璧に妄想癖と虚言癖の人間の顔だよ」
「でも、あのスナップ写真は?」
「あれは、他人の空似だよ。
彼には固い思い込みがあるからそのように見えただけで、その後の襲われた話も多分妄想だろうね」
「じゃあ、お母さんの話も彼の虚言なんでしょうか?」
「恐らくそうだろうね。
虚言癖の人間というのは、どんどん勝手に頭の中でストーリーを作っていくものなんだ。
それはミステリー作家も顔負けなくらいね」
「そんなものなんですね、、、」
そう言って看護師は黙り込んでしまった。
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それから一週間が過ぎ、再び末崎はM医院を訪れる。
だがその時の彼は、医師が最初に診療した時とは見違えるように風貌も態度も明るいものに変貌していた。
最後に彼は医師に
「おかげさまで俺もようやく新しい人生を踏み出すことが出来そうです。本当にありがとうございます」と言って深々頭を下げると意気揚々と室を出ていった。
末崎が立ち去った後、看護師は唖然とした様子でM医師の顔を一瞥すると、こう言った。
「やはりあの人の言っていたことは、作り話だったんですかね?」
M医師は「さあ、どうだろうね」と呟いた後、軽くため息をついた。
それからしばらく経った後、紺色のくたびれたジャケットを羽織った中年の男が医院を訪ねてくる。
応接室でM医師が応対したその男は、市内にある警察署の刑事だった。
困惑した表情の医師の正面に座った刑事は「この方をご存じでしょうか?」と言って、一枚の写真を手渡す。
M医師は写真を見ると「はい」と答えた。
気味が悪いですね、怖かったです((( ;゚Д゚)))