冬の山道は要注意!!
投稿者:rark (32)
「ん?何寝ぼけてんだよ。せっかくだし、朝飯食い行こーぜ。」
いつもと変わらない、能天気な征爾さん。夢だったのか?と思い、窓の外を見る。しかし、
(……え?)
昨日あったはずの、放置車両がなくなっている。
もう訳が分からなくなった僕は、思い切って征爾さんに聞いてみることにします。
「征爾さん。昨日の夜のこと覚えてないんですか?」
「ん?あぁ。昨日お前が後ろの座席行く時にすっ転んだことか?」
「いや……そうじゃなくて深夜……。」
「ん?俺ぁずっと寝てたと思うけど…。あー、そういえば嫌な夢は見たな。」
「嫌な夢?」
「あぁ。」
「事故で人が死ぬ夢でな。昨日の俺らみたいに、山道でスリップしてよ。で、ガードレールに突っ込んでそのまま落ちたわけ。でも運が良かったのか悪かったのか、運転手の女は投げ出されて、崖の少し出っ張ってるとこに引っかかったわけ。でもまあ、いつか落ちることなんて目に見えてるんだが、そいつァずっと、「落ちる……落ちる……」
って呟いてんの。で、最終的に落ちてしまうんだがな。
こっからはマジで生々しかったよ。人が崖を転げ落ちていくにつれて、どんどん体の形がぐちゃぐちゃになっていくんだよ。登山とかで落下死の死体は酷い状態だってよく言うだろ?まぁ、俺もそこまでなるとは思ってなかったけどな。」
征爾さんはそこで、「まぁ夢だけど」と言って話を終わります。
それに続け、
「え?まさか俺、寝言でなんか恥ずかしいこと言ってた?」
と言ったその瞬間、
キィィィィ!
高い音が響き、車がスリップする。
「うおっ!?」
悲鳴のようなブレーキ音が響き、ぼくらの乗っている車は、ガードレールスレスレで停止する。おそらく、日陰になっている所がまだ凍っていたのでしょう。
「あっぶな……死ぬとこでしたよ?」
「ッハハ。野郎と心中なんざごめんだよ。」
窓の外を覗く。かなりの高さがあるようだ。そこでふと崖の下に、に、ボロボロの車の残骸が、うっすらと見える。 帰りの征爾さんの車に揺られながら、僕は昨日の夜のことを思い出す。あの肉の塊のようなやつが呟いていたこと。多分、こう言っていたんだと思います。
「落ちろ。」
もしもあのまま僕達が落ちていたら……。そんなことを考えている僕の横で、口笛を吹きながら運転をする征爾さん。
まぁ、こういう人には案外、救われるのかも知れませんね。
面白かった!