【short_22】ハムの子

子供のころハムスターを飼っていて苦い経験をしたことがある。

１匹だけもらったはずのハムスターが、なぜか子供を産んだのだ。

ミミズを太くしたような赤ちゃんハムスターが４匹生まれた。

喜んだのもつかの間。学校から戻ると赤ちゃんハムスターは１匹残らず消えていた。

その事を両親に問いただすと「きっと親が食べちゃったんだね」と言った。

親が子を食べる。そんな信じられないことがハムスターの世界ではよくあることだという。

その夜ボクは親のハムスターを懲らしめようと、こっそり外に持ち出して公園に連れて行った。「お前など、どこへでも行って消えてしまえ!!」そう言って地面に置いた。

するとどうだろう。あれほどはしゃぐのが好きだったハムスターが、逃げるのではなく、逆にヨチヨチ歩きとなり、警戒しながらボクの足元に戻って来た。

それを見たボクは少し可哀そうになり「反省したか!?もうしないな?」と声をかけ、

ハムスターを拾い上げて帰ろうとした。

その瞬間、草むらから猫が飛び出してきてハムスターを咥えたかと思うと、
ものすごいスピードでそのまま走り去っていった。

「チューー!!」というハムスターの断末魔だけが闇の中に響いた。

さて、なぜボクがこんな話をしているのかと言うと・・・
実はボクと妻の間に出来た赤ちゃんが昨日から行方不明なのだ。
警察には誘拐事件として届けたが・・・。

ボクは今夜、妻を公園に連れて行こうと思う。そこで白黒はっきりさせたい。