田中くん
投稿者:泥沼 (2)
「Aってさ、田中への当たりが強かったもんな」
紛れもない事実でした。
お調子者のAは笑いを取るために、田中くんへ相当酷いことをしていたんです。だからこそ、誰もが思ったことでしょう。
「……アイツの呪いかよ」
通夜終わりなので、不謹慎な発言でした。
それでも、誰も注意する気が起きません。
生前のAが語っていた内容が、頭にこびりついてしまったからでしょう。ただ、全員で怯えても仕方ありません。
「田中のこと調べてみるか」
田中くんの身元が分かる奴は誰か居ないのか。
僕たちは必死に調べてみることにした。
オカルト話には興味はない。
ただ、Aの話がどうしても気になったのだ。
そして——。
中学三年時に、田中と同じクラスだった奴に貴重な情報を貰えた。僕たちが通っていたのは、公立の小学校で、同じ区内の公立中学校。それ故に大半が同じ学校に進むんだ。
これで田中がどこの高校に通えるか分かると思っていたのだが——その予想は大きく裏切られることになってしまう。
「田中はさ、中学三年の十月頃だったかな? アイツ、転校したんだよ。卒業まであと少しってところだったんだけどな」と。
そういえば、そうだったかもしれない。
もう遠い昔の話なので思い出せない。
けれど、田中が転校したという話は聞いた記憶があった。
田中鬼ごっこを提案した日以来、田中くんは僕に付き纏うようになった。機転を効かせた僕の一言で、理不尽な暴力を遭うことはなくなった。彼は僕が守ってくれたと思ったのだろう。
しかし、付き纏ってくる田中くんが怖くなっていた。
小学生にとっては超重要なイベントの修学旅行や社会科見学などでも、僕と同じ班じゃないと嫌だと駄々を捏ねるようになったのだ。何かとあるごとに、僕と同じを強要してくるのだ。
そして、事件が起きるのだ。
あの日は、廊下で友達と喋っていたので、田中くんから喋りかけられても無視してしまったときだった。ずっと喋りかけてくる彼に「邪魔」と言ってしまったのが悪かったのだろうか。
教室に戻ると、田中くんが暴れていたのだ。
「うわああああああああああああああああああああああああ」
床には教科書やノート。
他にも鉛筆や消しゴムなどの文房具類が散らばっていた。
机や椅子が倒れて、その中心には田中くんの姿があった。
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