押入れの腕
投稿者:綿貫 一 (31)
短編
2023/12/04
20:10
4,221view
妹が殺されてしまう。
誰の、ナンノ腕なんだ。
離せ離せ。
気持ち悪い。もう触りたくない。
はなせはなせはなせはなせ。
僕が背後の襖を開けたのは、無意識のことだった。
押入れの中に、薄暗い光が差し込んだ。
そのとたん、腕は妹から離れ、押入れの闇の深いところへと、音もなく消えていった。
僕は放心していた。
妹が、泣きながら押入れから飛び出してきた。
僕は抱きしめようと腕をひろげたが、妹はそんな僕の脇を通り過ぎ、駆けていった。
部屋の外から、K君の驚いた声がした。
「おいおい、お前、どうしたんだよ?
泣くなよ、よしよし。
そんなに抱きつくなって――」
妹も、K君のことが大好きだったからな。
§
帰ってきた親たちは、泣きじゃくる妹を見て訳を尋ねたが、答えを得られずに困り果てた。
僕は、何も言わなかった。
結局、両親は妹を連れて、家に帰ることにした。
僕は当初の予定どおり、もう少しだけ親戚の家に泊りたいと言い、それを許された。
§
結局、その夏を最後に親戚の家に泊りに行くことはなくなった。
それは親たちが決めたことだったが、僕にしても、妹にしても、行く理由はなくなっていた。
K君がいなくなってしまったのだから。
僕はあの後、K君とふたりだけで、神棚の部屋に入ったりなんかしていない。
K君に、「押入れの中に面白いものがあるよ」と言って、中に入るよう勧めたりなんかしていない。
この話は怖かったですか?
怖いに投票する 18票
K君を使って何だったか探ろうとしたんですかね・・・?ガクガクブルブル