ついていっても・・・
投稿者:とくのしん (65)
次第にノイズが入って画面が乱れ始めた。かろうじて森田さんと交わした会話が聞こえる。
「今はどこにいらっしゃるんですか?」
「どこか・・・そうどこか遠くに行ってしまった。みんな私が悪いんです。みんな・・全部私が悪いんだああああああああああ!!!!!」
森田さんが絶叫した。こんな場面無かったはず。大山はその絶叫に背筋が凍った。
「ごめんよおおおお!本当にごめんよおおおおお!!!おとうさんがあああ!おとうさんがみんな悪いんだよおおおお!!!!うあああああああああああ!!!!」
ノイズがかった映像から森田さんが跪いて絶叫しているのが確認できた。
その後、何事もなかったように大山が一人廃屋から出てくるところが映っていた。最後に交わした森田さんとの会話は残っていなかった。
何が何だかわからない大山は再度森田さんの家へと向かった。
辿り着いた先にはあの映像で見た廃屋があった。
「なんだよこれ・・・」
火事で焼けこげた今にも崩れそうな廃屋がポツリと佇んでいる。自身が見たあの家とは似ても似つかない様子にただただ唖然とするしかなかった。すると
「あの、すみません。森田さんのご親族か何かですか?」
背後から声を掛けてきたのは60~70代くらいの年配女性だった。
「違いますけど」
「あら、それじゃ不動産屋さんか何かかしら?」
大山は自身の名刺を渡し、テレビ局の人間だということを伝えた。
「ごめんなさい。てっきり森田さんのご親族か不動産屋さんかと思って」
「差し支えなければこのお宅について教えていただけませんか?」
大山がそう口火を切るのを待ってましたと言わんばかりに女性は語りだした。
「森田さん、本当にいいご家族でしたのよ。ご主人は結構いいところにお勤めしていたみたいですし、奥様も気さくで綺麗な方で。お子様2人も礼儀正しい子でした」
女性が続ける。
「半年くらい前ですかね、ご主人が仕事をお辞めになったそうなのよ。リストラとか言ってたかしら?お仕事お辞めになってから、奥様と夫婦喧嘩が絶えなくなってね。昼夜問わず騒ぎが聞こえていたの。それまで喧嘩の声なんて一度も聞いたことなかったから、近所でも心配する声があったの。それであの火事でしょ・・・」
大山も女性も廃屋に目を向けた。
「夜中に火が出たの。夫婦仲が悪かったとかで、1階で寝ていた森田さんは火に気づいて一人飛び出してきたんだけど、2階で寝ていた奥様とお子さん2人が亡くなってしまって。燃え盛る家に戻ろうとする森田さんを近所の人が必至に止めてね、あの姿は見ていられなかったわ」
「火事の原因は何だったんですか?」
「どうやらご主人の煙草の火の不始末だったって話」
「それで森田さんは今どこに?」
「亡くなったそうよ。自殺したって」
「自殺ですか・・・」
「それでねご主人も奥様も早くにご両親を亡くしていらっしゃるらしくて、ご親族に連絡が取れないそうで。森田さんには申し訳ないけど、このままじゃ不気味で早くどうにかしてほしいのよ」
女性は廃屋を見ながらそう呟いた。
今回も面白かったです!
確かに地獄、またはそれに準ずるものは意外と近くにあるのかもしれませんね。
洒落怖ビデオレターをとくのしんさん風にアレンジしたらこうなった、って感じですね
これだけは言いたいのは・・・私が悪いんであって、家族は悪くありませんから!
何処かの社長のセリフを思い出しました。
読み応えがありました。
こんな話し大好きです。
とくのしんさんのファンですが、この話も楽しめました。
ただ、一ヶ所誤字に気付いたのですが、完成な住宅街ではなく閑静な住宅街ですね。
面白かったので怖いに投票。
怖かった訳ではないけど
作者です。
久々の受賞作品ということで、たくさんの人に怖いと評価してもらい嬉しく思います。
なかなかコメント返せず申し訳ありませんでした。
誤字はこのあとしれっと修正させていただきます(笑)
もう一つの作品と同時受賞できたので、今月も調子に乗って2本アップしました(笑)
そちらもぜひよろしくお願いします。
かわいそうな話です。涙が出ました