世界の切れ目を見たかもしれない
投稿者:vichu (6)
私が中学一学年の頃だったので、十年近くも前になるのだが、その時の事を私は鮮明に覚えている。
時刻は夕方から夜に差し掛かる頃だった。自宅にて夕餉を済ませ、自室でくつろいでいた時の事だ。
読書を一時中断し、飲み物を台所から取ってこようと席を立つ。そしてふと私の文机へと目を遣る。
すると、幅2センチ程度の細長い光の線のようなものが、私の机をなぞった。
分かりやすく説明すると、カーテンからの木漏れ日のようだった。カーテンを完全に閉め切らずに隙間を開けていると、外の光源から光が入り、細長い線の様になる。そして外をヘッドライトを点灯した自動車なんかが通過すると、その動きに合わせて光も移動する。カーテンに限らず、誰もが日常の何処かでこのような光景を目にした事あるだろう。
実際、私が第一に思い浮かんだ印象がこれなのだ。すぐさま私は振り返り、背後を確認した。しかし原因と思しきものは無く、部屋の窓に掛けられているカーテンも確認したが、机の位置の関係上有り得ないという結論に至った。
目撃した際、私は全身に鳥肌が立った。ものが急に消えたり、出現した訳でもない。至って地味な現象だった。しかし私は、寒気さえ覚えた。何か分解した機械の基盤を見たような、深い深い井戸の底を見たような、何か禁忌に近いものを私に感じさせた。
その光の線は何かを写していたような気がする。だが何故か一切思い出せない。抱いた印象や細部の出来事すら鮮明に覚えているのに、どうしてもそれだけは記憶が不確かなものになり、思い出そうとすればする程、わからなくなっていった。
結局、その後は私に良くない事が起こるとか、そういった後日談のような出来事は無かった。しかしこの一件より、ネットで出回っている平行世界や異世界の類の小話を、全くの嘘であると決めつけてかかる事は無くなり、他の世界が存在するかもしれないと思い始めたのだった。
コピー機の中の光みたいな感じかな?