Fさんのフィリピン・ヒトコワ紀行
投稿者:kana (210)
【まえがき】
(もし朗読配信していただける方がいらっしゃいましたら、まえがきは省略して結構です)
前回、ボクの大大大先輩であるFさんのフィリピン心霊紀行をご紹介しました。つづきを希望される声もあったのですが、Fさんのお話の中でオカルトチックなのはその心霊治療の件くらいで、実は後は事件や冒険的なものがメインで怪談にはなりそうもありません。
ただ、当時のフィリピン(マルコス政権下)で、いろいろとコワイ人たちに出会っていますので、ヒトコワとして紹介できなくもないかなぁ・・・と思い、書き連ねる事にいたしました。
前回紹介しきれなかった現実の恐怖、お時間がありましたらお付き合いください。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
まず、Fさんについてですが、埼玉県の熊谷市で大規模開発の設計事務所を主催する方で、趣味でハンティングもされ、スキート射撃(お皿を飛ばしてショットガンで撃つやつ)は国体選手にもなった腕前。銃にめっぽう強いこともあり、当時治安の悪かったフィリピンに渡るにあたって拳銃所持許可を取り、ワルサーPPを愛銃として所持しておりました。
ちょっと話はそれますが、どうやって拳銃所持の許可を得るのか簡単に説明すると、まず日本の裁判所から「犯罪歴が無い」という証明書と、精神科医から「異常なし」という証明と、内科医から「麻薬を常習していない」という証明書をもってフィリピンへ行き、日本大使館にて英語の書類に直してもらい、その後フィリピン中央銀行に1500万円を供託して証明書をもらい、以上の4点の証明書とパスポートを持って「入国管理事務所」へ弁護士と共に行き、フィリピンの「市民権」を申請します。普通は申請に1か月くらいかかりますが、10万円ほどワイロを渡せば翌日には申請がおります。この市民権さえあれば、銃砲店でフルオート以外の銃ならなんでも買えます。※これはFさんが体験した当時のかなり古い情報ですので、今現在もこれと同じとは限りませんのであしからず・・・。
尚、所持許可がなくても闇で持ってる人はたくさんいます。ただ、外国人で所持許可をもってないことがバレると、大金を支払うまで釈放されないなんてことはよくあるそうで、とくにクリスマス前になると難癖付けてくる警官が山のようにいるとか。みんなワイロ欲しさにです。日本人はすぐにお金を出すので良いカモです・・・とのことです。
フィリピンで毎日のように拳銃の練習をしたFさん。すでに1万発は練習に費やし、暗闇で拳銃の分解・組み立てもできるほどになっていました。もちろん射撃の腕も超一流です。
Fさんが開発の拠点を置いたのはバギオシティ。前回心霊療法でお世話になったジュンラボ市長のおひざ元。ここバギオは標高850~1500mの位置にあり、南国を想像するフィリピンの中では比較的涼しい避暑地になっています。なんでもマルコス政権の時代、7,8,9月は政府が丸ごとバギオに引っ越してきたとか。
1565年~1898年までの333年間、フィリピンはスペインの植民地として過酷な生活を強いられてきました。その後は1946年までアメリカの植民地となりました。が、フィリピンのあまりの暑さにアメリカ人たちが避暑地を作ろうと計画、当時ジャングルだったバギオを切り開いて小さな町を作ります。
日本からは囚人(政治犯)400人がバギオに送り込まれて、道路の拡幅など2年間従事していたようです。罪を許された400人の内200人は日本に戻り、200人はバギオに残って地元の女性と結婚し、移民となって今に至っています。ちなみに日系3世・4世・5世が1000人程居ますが、日本語は話せないそうです。そんなバギオの市長とFさんはひょんなことから顔見知りになった・・・というお話は前回も語ったので省きます。
前回、このバギオ市長の警備を行っていた少佐がすごい人なので、別の機会には紹介すると書きましたが、少佐の件はやめておきます。というのも、この少佐はフィリピンのウイリアム・テルと呼ばれるほどの射撃の名手であり、同じく射撃の名手となったFさんとは射撃大会を通じて激しく競い合うような間柄となり・・・つまり射撃がすごいというお話であって奇々怪々さんでご紹介するような『怪談』めいた人ではないのです。
ということで、ここから先は当時Fさんの周りで本当に起きた『ヒトコワ』な事件を二つ、ご紹介します。
・・・・・・
【警部補射殺事件】
今はどうか判りませんが、Fさんが滞在していた頃のフィリピンは大変治安が悪い国でした。
そのため拳銃を所持し、練習にいそしんだFさんですが、当然弾丸を大量に買います。その時、軍や警察で使用されているのと同じ弾丸は安く手に入ったそうです。いわゆる『横流し』があるからです。その『横流し』をやってる張本人が、軍の司令官や警察署長なのです。
そしてその手先となって働いているのが『目明し』という職業。時代劇に出てくるあの『目明し』です。彼らは身分は警察官だけれど、給料はありません。仕組みはと言うと・・・
ある警察署の定員が250名だとすると、200名を正規で雇い、残りの50名は『目明かし』として採用する。国から支給される250名分の予算のうち、50名分はトップの懐に入る。バギオ市長のようにボディガードとして警察官を雇うと、その警察官の給料は雇い主が払い、国から支給されるはずのその警官の給料分はトップの懐に入る。Fさんも後にボディガードの警官を雇い、給料を支払っています。警察トップはホクホクです。
こんなことを堂々とやっていても、汚職で逮捕された者は一人もいません。
フィリピンには、いわゆるヤクザとか、ギャングと言うような輩はおらず、それを警察官が兼務していると言われています(あくまでも当時の話)。
目明かし達は給料が無いから、どこかで稼がなければいけません。トップの汚職の手伝いをしても金にはならないので、いきおい、悪事に手を染める。トップに金さえ上納すればなんでもあり。マニラ市内にもぐりの射撃場をやってる目明かしは真面目な方で、いわゆる風俗営業をしている店は、厳密に言えば違法ですから、目明かし達のかっこうの稼ぎ場です。
毎月目こぼし料を徴収する、飲み代はタダ。そのせいで廃業したり、マニラから逃げ出したりする店もあり、騒ぎになることもあります。
そんな中で、Fさんが雇っていた警部補がクルマで移動中に、警視総監の息子に射殺される事件が発生しました。この息子ももちろん警察幹部です。
実はこの警視総監がフィリピンでの麻薬の大元締めで、たまたまFさんのガードをしていた警部補が捕まえた泥棒が麻薬を持っていたので追及したところ、警視総監の名前が出てきたので極秘に捜査をしていたらしい。・・・正義感とか職務に忠実だからではなく、この警視総監率いる天文学的な利益の揚がる麻薬プロジェクトの一員になりたかったからです。
事情通の話によると、前記の警視総監の息子と警部補の間で処遇(分け前)について話し合いがあったそうですが、条件が合わず物別れに終わっていたらしい。その3日後、射殺されました。理由は「警部補が拳銃でこっちを狙ったから、身を守るため発砲した・・・」
面白かったです。 再現映像で見てみたい。
↑kamaです。コメントありがとうございます。
フィリピンで映画化してほしいですね。ちょっとインド映画風なノリで。