【インドノニキ】
投稿者:青年将校 (7)
短編
2023/10/04
21:11
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ふと、何かの気配を感じました。
かすかに呼吸音が聞こえます。
薄目のままゆっくりと左側に視線を移しました。
「ひっ…」
漏れそうになる叫びを飲み込みます。
隣のベッドの2段目には息子さん。
彼が横たわりながらじっと僕の顔の辺りを見つめているのです。
さらに毛布の下で下半身を上下に擦っているのが分かりました。
「フッフッフッ…」
心臓が止まりかけます。
薄目のまま助けを求める気持ちでベッドの1段目の方に視線を移します。
老婦人はベッドに腰掛けており、なぜか彼女も僕の方をじっと見上げていたのです。
言いようのない恐怖を押し殺し、僕は寝返りを打ったテイでゆっくりと彼らに背を向けました。
永遠とも感じる時間の中、全神経を背中に集中させた僕は、結局朝まで一睡もできませんでした。
夜明けとともにヴァラナシの街に到着します。
何も知らない友達はスッキリした顔で興奮気味です。
駅での別れ際、息子さんが僕らに言いました。
「Thank you」
とても目を合わせることができませんでした。
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海外の新台列車は違う意味で怖いですよね。