とっても素直な人
投稿者:ねこじろう (147)
恐々さらに近付き凝視する。
そしてとうとう
「うわ!」
俺は小さく悲鳴をあげると、右側のドアの方へと倒れこんだ。
初めそれはマネキンか何かの首かと思った。
だが違った。
男は誇らしげにその髪を掴むと、無造作にリュックの外に持ち上げる。
それは、、、
紛れもなく人の頭部だった。
それは眠っているかのように目を瞑りぽっかりと口を開いており、切断部からは生々しい肉塊が覗いていて、そこからポタポタと血が滴り落ちている。
次の瞬間俺は強烈な吐き気を感じ、慌ててドアを開けるとアスファルトにひとしきりもどした。
後ろから男の声が聞こえる。
「あのぉ、あのぉ、あのぉ、これ、田辺さんが蛇より嫌いな上司の『会田』でしょ。
昨晩会社の名前と部署を言っていたじゃないですかあ。 だからボク忘れないようにメモして、がんばって訪ねたんですよぉ。
そしたらね応接室に通してくれて、しばらくしたらやって来たからスタンガンで眠らして、準備していた鉈を使ってその場で処刑してやったんですよぉ。
結構大変だったんだけど、ボク頑張りました。
それから田辺さんが昼間よく休憩していると言っていた、このコンビニに来てみたら居られたんで、、、」
「あんたなんてことしたんだ!俺は、俺は、そんなこと頼んだ覚えはないぞ!」
俺はドアを閉めて男の方に向き直ると怒鳴った。
男はしばらくの間キョトンとした顔をしていたのだが、やがて今にも泣きそうな顔になり
「ひどい、ひどいよぉ、田辺さん。
あなた言っていたじゃあないですか。
上司の『会田』がいなくなったらこの世界もかなり良くなるって、、
そうすることで世界はまた一つ浄化されるんだって、、
ボクは、ボクはただ、あなたの素晴らしい世界観に従っただけなのに、、、」
と言って男は『会田』の頭をリュックに戻しファスナーを閉じる。
そして再びそれを背中に背負うとドアを開け、外に出た。
俺もあわててドアを開け外に出ると、男の方へ走った。
大粒の雨が体のあちらこちらを濡らしていく。
「ちょ、ちょっと、待ってくれ!
あんた今からどこに行くんだよ!」
素直すぎて恐ろしい!
確かに、、、
─ねこじろう