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ヒトコワ

ねこじろうさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

とっても素直な人
長編 2023/09/19 11:30 11,633view
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恐々さらに近付き凝視する。

そしてとうとう

「うわ!」

俺は小さく悲鳴をあげると、右側のドアの方へと倒れこんだ。

初めそれはマネキンか何かの首かと思った。

だが違った。

男は誇らしげにその髪を掴むと、無造作にリュックの外に持ち上げる。

それは、、、

紛れもなく人の頭部だった。

それは眠っているかのように目を瞑りぽっかりと口を開いており、切断部からは生々しい肉塊が覗いていて、そこからポタポタと血が滴り落ちている。

次の瞬間俺は強烈な吐き気を感じ、慌ててドアを開けるとアスファルトにひとしきりもどした。

後ろから男の声が聞こえる。

「あのぉ、あのぉ、あのぉ、これ、田辺さんが蛇より嫌いな上司の『会田』でしょ。
昨晩会社の名前と部署を言っていたじゃないですかあ。 だからボク忘れないようにメモして、がんばって訪ねたんですよぉ。
そしたらね応接室に通してくれて、しばらくしたらやって来たからスタンガンで眠らして、準備していた鉈を使ってその場で処刑してやったんですよぉ。
結構大変だったんだけど、ボク頑張りました。
それから田辺さんが昼間よく休憩していると言っていた、このコンビニに来てみたら居られたんで、、、」

「あんたなんてことしたんだ!俺は、俺は、そんなこと頼んだ覚えはないぞ!」

俺はドアを閉めて男の方に向き直ると怒鳴った。

男はしばらくの間キョトンとした顔をしていたのだが、やがて今にも泣きそうな顔になり

「ひどい、ひどいよぉ、田辺さん。
あなた言っていたじゃあないですか。
上司の『会田』がいなくなったらこの世界もかなり良くなるって、、
そうすることで世界はまた一つ浄化されるんだって、、
ボクは、ボクはただ、あなたの素晴らしい世界観に従っただけなのに、、、」

と言って男は『会田』の頭をリュックに戻しファスナーを閉じる。
そして再びそれを背中に背負うとドアを開け、外に出た。

俺もあわててドアを開け外に出ると、男の方へ走った。

大粒の雨が体のあちらこちらを濡らしていく。

「ちょ、ちょっと、待ってくれ!
あんた今からどこに行くんだよ!」

3/4
コメント(2)
  • 素直すぎて恐ろしい!

    2023/09/21/18:24
  • 確かに、、、
    ─ねこじろう

    2023/09/22/22:42

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