「佐藤さん」の手料理
投稿者:青年将校 (7)
先日実家に帰省した時の話です。
私の実家は東京の西にある「都営団地」と呼ばれる集合住宅です。
リビングでテレビを見てると突然ドアをノックする音が聞こえました。
「すいませーん、〇〇さん、すいませーん」
インターホンくらい鳴らせよ…と思いつつドアを開けると、60代くらいの老婦人が紙袋を持って立っています。
…誰だろう?
ニコニコしながら老婦人が話し始めます。
「あら…〇〇さんの息子さん?初めましてぇ…お父さんかお母さんいます?」
父を呼びリビングに戻ると、玄関から明るい話し声が聞こえてきます。
父が紙袋を持って帰って来ました。
あの人誰だっけ…?と聞くと、「佐藤さん」という方らしく、1年ほど前にこの団地に越してきたのだと教えてくれました。
数ヶ月前、大きな荷物を運んでいるところを父が助けてから、近所付き合いが始まったそうです。
父の話では、「佐藤さん」は早くに旦那さんを亡くしており、子供もおらず、ずっと1人で暮らしており、頻繁に手料理を持って来てくれるのだそうです。
ところで台所にいる母は「もう…また?」と迷惑そうな顔をしています。
なんでも持って来る料理がどれも極端に味が薄かったり濃かったりで、断りきれず頂くものの、今では手を付けずにそのまま捨てているらしいのです。
今回も母は捨てようとしていましたが、「佐藤さん」の不遇を聞いた私は少し心苦しくなり、「俺が食べるわ」と紙袋を受け取りました。
中を覗くとプラスチックの容器に入ったコロッケとピンク色のタッパーが見えます。
なんだ美味しそうじゃんと思いながら、チンをしたコロッケにソースをかけてかぶりつきます。
肉汁が溢れて来ました。
どうやらメンチカツだったようです。
濃い味のソースのおかげで味は気になりません。
…ザリッ…
…んっ……?
奥歯の辺りで異物感を感じました。
ゥ゙エ゙ッ…
口の中のカツを吐き出します。
何だよコレ…
吐き出した物の中に長い毛?と爪のような物体が混じっています。
気持ち悪っ…
急いで口をゆすぎに洗面所へと向かった私は、
それ以上メンチカツに手を付けませんでした。
こっわ!!!
いろんな意味でこわです。
二重人格?不気味です。
じみにこわいですけど…..
こわっ
髪の毛メンチカツ、不味そう