火葬技師Mの悪夢
投稿者:ねこじろう (147)
「これからあんたが棺とその中のものを後片もなく焼き付くてしまうと、それらは全て最初から此の世に存在してなかったということになる。
私たちさえ他に口外しなければな、、、」
─そうか、こいつらがこんな片田舎の火葬場まで足を運んだのも、違法な火葬をしたいからだったのか。
それなら100万円という高額な報酬も納得出来る。
それではということで俺は男に言った。
「そうか、だったら棺の中だけでも確認させて欲しい」
「ダメだ。とにかくあんたは四の五の言わず私の用意した棺を火葬してくれたら、それで良いんだ。
良いな?」
男は既に命令口調だった。
結局俺は金の誘惑に負け、男の言う通り棺の中身さえも確認せずに火葬の段取りを始めることにした。
担架に棺を乗せる時には、ずっしりとした重みがあったから恐らくはご遺体が収められているのだろう。
無理やりそう思って俺は自分を信じさせた。
それから担架を押しゆっくり炉前に移動していく。
そして金属の扉を開きいよいよ中に入れようとした、正にその時だった。
「うう、、、」
ドキリとして息を飲んだ。
棺の中から微かに人の呻き声が聞こえる!
俺は担架を押す手を止めると振り返り、背後に立つ男を睨む。
男は少し首を傾げるようにしながら、
「どうした?早く進めろ」とせかす。
俺は再び前を向きどうしたものかと暗いトンネルのような炉内を睨む。
するとまた、
「ううう!、、、うう!、、、うう!」
今度ははっきりと何かを懸命に訴えるような男の声がし、モゾモゾ動く音まで聞こえる。
この時点ではっきりと分かった。
この棺の中に入っているのは遺体なんかではない!
生きている人間なんだ。
猿轡をされ手足を縛られている男の姿が、俺の脳内にパッと浮かんだ。
「おい早くしないか!」
また背後から男の声がする。
緊張感がすごくてハラハラしました。
コメントありがとうございます。─ねこじろう
場景を想像したらゾッとした。
こういう話は嫌いじゃないぞ?
悪党焼き払ったの気持ち良すぎ
仕事ぶりが評価され、闇葬儀は繁盛した。私もそこそこの蓄えができ、生活にも余裕が出て来た。必殺仕事人の気分。そう、あの日までは。今、檻を見つめながら思う。情けない生活を送っていたあの日、黒光りする車を見た瞬間、自分は死んでいたのだ。世の中、理不尽なことだらけ。正義なんて存在しない。当たり前だ、自然界を見ればわかる。議員のどら息子?些細なことだ。いずれ皆、死ぬ。世の中、ひとりやふたり、いなくなっても、何事もなかったかのように時間は過ぎて行く。さあ、次の世界へ、いざ。
皆様、コメントありがとうございます。
ねこじろう
私刑執行されたのですね。
主人公の年齢設定だけが少し気になってしまいました。