火葬技師Mの悪夢
投稿者:ねこじろう (147)
すると男は「だが、ここは人を焼く装備は整っているんだろう?」とまた当たり前のことを質問してくるので、
「それはそうなんだけど、今日はもう終わりなんだよ。
悪いが帰ってくれないかな?」
と今度は少々きつめに言った。
男は何かを思案しているように、しばらく無言を通していたがやがて再びしゃべりだした。
「あんたにはあんたの事情があるように、私にも私の事情があるのだ。
あんたの事情と私の事情を天秤にかけると間違いなく私の事情の方が重要なんだ」
男の偉そうな口の聞き方にさっきからイラついていた俺は、
「とにかくダメなものはダメなんだ。
どういう事情があるか知らないが早く帰ってくれ!」
と言った。
すると男は数歩前に進み俺の目前で止まると、スーツの内ポケットに右手を突っ込む。
驚いた俺は反射的に後ろに下がった。
男は「安心しろ。あんたに危害を加えるつもりはない」
と言って左手を上にあげると、右手でポケットから紙の束らしきものを出し俺に手渡した。
それを見た瞬間俺はたじろいだ。
それは帯付きの一万円札の束
「あんたはこれから、いつも通りの段取りで仕事をする。そしたら自動的にあんたの懐にはその100万円が入ってくる。どうだ悪くない話だろう?」
─100万円、、、これだけあれば俺の借金はほとんど帳消しになる。
俺はしばらく手に持った札束とにらめっこしていたが、情けないことだが最終的には男の要請を飲むことにした。
ふと見るといつの間にか男の背後には、二人の男たちが棺を抱えて立っている。
その男たちもガイ・フォークス・マスクを被り黒いスーツ姿だ。
腹を決めた俺は男に言った。
「分かった。
じゃあ、まず火葬許可書を頼む」
「フフフ、正に地獄の沙汰も、、、という奴だな。
許可書?そんなものはあるはずがない」
俺の手続き的な要請を男は軽くいなす。
「冗談じゃない!行政の許可書なしで火葬したら捕まっちまう。
早く許可書を出してくれ、」
声を荒げて訴える俺に男はこう言った。
緊張感がすごくてハラハラしました。
コメントありがとうございます。─ねこじろう
場景を想像したらゾッとした。
こういう話は嫌いじゃないぞ?
悪党焼き払ったの気持ち良すぎ
仕事ぶりが評価され、闇葬儀は繁盛した。私もそこそこの蓄えができ、生活にも余裕が出て来た。必殺仕事人の気分。そう、あの日までは。今、檻を見つめながら思う。情けない生活を送っていたあの日、黒光りする車を見た瞬間、自分は死んでいたのだ。世の中、理不尽なことだらけ。正義なんて存在しない。当たり前だ、自然界を見ればわかる。議員のどら息子?些細なことだ。いずれ皆、死ぬ。世の中、ひとりやふたり、いなくなっても、何事もなかったかのように時間は過ぎて行く。さあ、次の世界へ、いざ。
皆様、コメントありがとうございます。
ねこじろう
私刑執行されたのですね。
主人公の年齢設定だけが少し気になってしまいました。