夏の夜の悪夢─ベランダに現れる女
投稿者:ねこじろう (147)
─どこか遊びにでも出掛けたのかな?
でも、そんな時はあいつ必ず書き置きするか、前もって携帯に連絡するはずなんだが。
何度となく携帯に電話を入れてみるのだが、応答がない。
結局眞鍋は深夜まで待ってみたが、とうとう小林が部屋に姿を見せることはなかった。
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翌朝はゴミ出しの日だったから、眞鍋は部屋着のまま両手に黒く大きなゴミ袋を2つぶら下げてアパートの外に出ると、敷地入口辺りにあるゴミステーションまで歩く。
金網のドアを開け中に入ると、既に片隅に黒いゴミ袋が5個置かれていた。
持ってきたゴミ2個をそれらの手前に並べると、眞鍋は何気に片隅のゴミの一つに視線を移す。
そして一瞬で驚愕した。
黒いゴミ袋の表面から人の横顔が透けて見える。
その下方には腕とか足が、、
彼は緊張した面持ちでそこに顔を近付けた途端、「うわっ」と小さく悲鳴を上げて尻餅をついた。
眞鍋はポケットから慌てて携帯を出すと、震える指で『110』とタッチした。
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駆けつけた警察官たちが片隅に置かれた5個の黒いゴミ袋の中身を確認したところ、中には人間の頭部や手足、胴体臓物等がぐちゃぐちゃに詰められていて、それぞれのパーツの損傷は酷かった。
ゴミステーションで眞鍋が偶然に見たのは、小林の頭部だった。
後から警察が調べた結果、5個のゴミ袋の中には総勢4名の男性のバラバラ死体が詰められていたらしい。
その全てが狂暴な野生動物に襲われたかのように、無惨に引きちぎられていたという。
そして眞鍋への警察の聴取から、向かいの棟のあの部屋が捜索された。
そこは昨年から会社員の男性が借りていたということだった。
だがその男性は見当たらず、室内からは複数の男性の衣服や下着、壁や床からは大量の血痕が確認された。
それから眞鍋が見たあの女が姿を現すことはなかった。
【了】
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