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ねこじろうさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

夏の夜の悪夢─ベランダに現れる女
長編 2023/08/14 15:51 8,344view
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小林は愛嬌のある丸顔をにやつかせながらベランダ入口から顔を出すと「おい、ちょっと来てみろよ」と言って、リビングのソファーで携帯をいじる眞鍋に手招きした。

眞鍋は「何にやついてんだよ?」と訝しげに尋ねながら立ち上がるとリビングを横切り、ベランダの入口まで歩く。

サンダルを履くと、手すりのところに立つ小林の隣に並び立った。
そして小林の横顔を見ながら、「どうしたんだ?」と問いかける。

時刻はちょうど夕刻の頃で、空には朱色の雲が広がっていた。

眞鍋と小林は同じ大学の同級生で、大学近くのアパートの一室を二人でシェアしていた。
大学はちょうど夏休み期間中だ。

眞鍋は中肉中背のありきたりなタイプ。
対して小林は、丸顔でちょっと太めの愛嬌のあるタイプ。

この四階建てのアパートは2棟あり、向かい合って並んでいる。

小林が正面やや下方を指差す。

眞鍋はそこに視線をやると、「あっ」と息を飲んだ。

その目線のちょうど先にある隣の棟のベランダに女が立っている。

そこは眞鍋らの立っているアパート4階より1個下の階の1室のベランダ。

広さは二人の立つベランダと同じで、間口3メートル幅2メートルほどだ。

上方斜めからの眺めだから、そこの様子はおおよそ確認出来た。

女は肩までくらいのストレートの黒髪で色白の顔をしている。
どちらかというと華奢な感じだ。
ただ彼女はどうやら衣服を身に付けていないようで、白く豊満な胸や股間の翳りを隠しもせず中腰になり、何か大きな黒っぽいビニール袋を懸命に引きずりながら後退していた。

そしてベランダの片隅にそれを置き額の汗を軽く拭うと、奥の室内に姿を消した。

「明日出すゴミを置いたんじゃないか?」
そう言って眞鍋は小林の横顔を見る。

「まあ、そんなとこだろうけど、何か得した気分だろう」
小林はそう呟くと悪戯っぽくニヤリと笑い、サッサとベランダから室内に入って行った。
※※※※※※※※※※

その数日後のこと。

眞鍋も小林も午前中は部屋にいて、午後からはアパート近くのスーパーでアルバイトとして働き、午後8時過ぎに一緒にアパートに帰った。

ベランダで二人分の洗濯物を取り込んでいた眞鍋の声がする。

「おい、来てみろよ!」

台所で洗い物をしていた小林は手を止めると、ベランダへと歩く。

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