廃墟実況ライブ
投稿者:ねこじろう (147)
私とスタッフも同じ位置まで歩いた。
そして家屋の三角屋根真下付近を指差す。
そこには建て付けの悪そうな飾り窓がある。
『あの窓です。
あそこに真っ黒い人影が動くのが見えたんです』
そう言ってHさんは深刻な面持ちで、私やスタッフの顔を見る。
『あの窓の部屋は多分、かつて長男が閉じ込められていた座敷牢の部屋だと思うんです。それで今日はSさんたちに』
『あの部屋に行って欲しいと』
Hさんの言葉の後に、私が続けた。
※※※※※※※※※※
「あの家屋は所有者不明のまま既に数十年が過ぎていて、現在は町が管理しているということだ。
今回の放映はテレビ局が町の許可を得て行ったものだ。
玄関の磨りガラスの格子戸はがたついたが、なんとか開いた。
背後から小太りディレクターがライトで照らす光を頼りに、私たちは中に踏み込む。
もちろん各々懐中電灯を携帯していた。
私、Hさん、カメラマン、ディレクターという順番だ。
カメラマンが再び撮影を開始する。
室内はひんやりしていた。
うっすらカビ臭い香りがしていて、どこかどんよりした重々しい空気が漂っている。
玄関入ってすぐは土間で、その先の小上がりの襖を開けて上がると畳の間があった。
そして私が小上がりの手前で靴を脱ぎ始めた時だ。
『あっ』
突然真後ろのHさんが声を出した。
『どうしました?』
慌てて振り向き、Hさんを見る。
彼はしばらくじっと無言で土間の奥の暗闇を凝視してたが、やがて『い、いえ、すみません見間違いのようです』と言ってまた正面に向き直る。
それから各々は靴を脱ぎ、畳の間に上がり込んだ。
そこは8帖ほどの居間のようだった。
カメラマンが撮影しだす。
中央に大きめの炬燵。
男が金鹿を殺したんだから、男が金鹿になるんじゃないの?
妹は急にどした。
その男が金鹿になり、妹は祟りで同種に変異したんやろ、、、
皆様、なかなかに鋭いところをつきますね。ラストの場面につきましては、それぞれで解釈していただければ?と思っております。─ねこじろう