認知症の親父と過ごした最後の日々
投稿者:ねこじろう (147)
夜。
仏間に敷かれた布団に寝る親父の横に敷いた布団に、俺は横になっていた。
暗い天井を眺めながら悶々としていると、横から親父の思い詰めた声がする。
「幸子、、幸子、あの時は本当にすまん。
俺が悪かった。
幸子、、だからもう許してくれ」
親父はしばらく苦しげに同じような言葉を繰り返しているかと思うと、突然ムックリと半身を起こす。
それから暗闇の中四つん這いで仏間奥まで進むと、そろそろ障子を開きサッシ窓を開ける。
そして縁側から庭へと降りたつ。
俺は親父に気づかれないようにサッシ窓の側まで行って外を覗く。
月明かりの下、裸足のままふらふら庭を歩いている親父。
そのまま見ていると、親父は西側片隅にある大きな柿の木の下まで行きおもむろに跪くと、まるで犬猫のように両手で土を掘り返し始めた。
─お、、親父、何を?
思わず呟き唖然としながらその様子を見ていると、やがて親父は手を止めた。
そしてしばらくの間がっくりと項垂れているとまた立ち上がり、縁側に向かって歩きだす。
俺は慌てて布団に戻った。
しばらくすると親父は何事もなかったかのように俺の隣の布団まで来ると、そのまま横たわった。
枕元の携帯を見ると、時刻は深夜2時過ぎ。
親父の寝息を確認すると、俺は意を決した。
暗闇の中ゆっくり立ち上がると縁側まで歩き、庭に降りる。
それから東側片隅にある物置小屋まで行くと、中からスコップを持ち出す。
そしてさっきの柿の木の下まで歩くと、携帯のライトを頼りに親父が掘り返していた辺りをスコップでザクザクと掘り出した。
額の汗を拭いながら50センチくらい掘り進んだ辺りで、スコップの先が何かに突き当たる。
スコップを傍らに置き、慎重に両手を使って周囲の土を取り去っていった。
それはどうやら大きめの行李のようだ。
俺はその行李の両脇を両手でしっかり掴むと、思い切り持ち上げた。
かなり重たかったが、なんとか地表に置くことが出来た。
それは縦1メートル横30センチ高さ30センチくらいある道具箱のようなものだ。
かつて親父が大工の頃使っていた道具箱に似ていた。
俺は箱の表面の泥を払い緊張した面持ちでその蓋に手を掛けると、ゆっくり持ち上げていく。
貴方が親殺しの大罪を犯す前に、お母様がお父様を迎えに来て、最終的に貴方を護ったのでしょうね。
変わり果てたお母様を目の当たりにしたご心痛はいかばかりかと、言葉が詰まります
こういうのが読みたかった
なぜだろう?涙がこぼれてきた。
すごく心に響きました。
⬆️皆様、暖かいコメントありがとうございます!
─ねこじろうより
母親はあの世からでも自分の子供を守るのですね。
何だか、実家の母に会いたくなりました。
コメントありがとうございます。
母の愛は深いですよね。
─ねこじろう
心にくる話ですね
良いものを読ませていただきました
ありがとうございます。
─ねこじろうより
とてつもない名作。
ありがとうございます。
ねこじろう
ここ最近で一番面白かった
ありがとうございます。
─ねこじろう
母の愛っていいものですよね
それにとてもいい名作
母の愛は海よりも深い、という言葉を思いだしました。
母の愛という観点から読んでいただいた方が意外とおられて、驚いております。
─ねこじろう
名作中の名作。この作品を越えるものは?
ヒトコワで心霊怖くて、そして温かい。これは名作!