認知症の親父と過ごした最後の日々
投稿者:ねこじろう (147)
だから最後くらいは俺が寄り添ってやるかと決断した。
俺は独身で割りと身軽だったということもあり、親父の介護をするためそれまで住んでいたマンションを引き払う。
そして店の業務の細々したことは信頼する従業員たちに任せ、重大な件の時だけ店に行くことにし、それ以外は電話やリモートで対応することにした。
まあいずれは施設に入れることになるのだろうが、それまでの間と思って親父と二人実家で暮らすことにした。
※※※※※※※※※※
同居を始めた当初は、認知症に起因する親父のおかしな行動に戸惑いの連続だった。
例えば、
○突然財布とか腕時計とかをとったと怒りだす。
○外を徘徊する。
○たった今食事を終えたのに、すぐご飯はまだか?と聞いてくる。
○箸でパンを食べたり手でご飯を食べたりする。
○そこにいないはずの人や動物がいると言い張る。
○挙げ句の果ては、夜寝る前にいきなり正座して、それではそろそろ失礼致しますと丁寧に礼をする。
最初のうちはイラつきながらいちいち間違いを指摘していたが後からそれは無意味だということに気付くと、親父の言葉や行動に適当に共感するようになってきた。
事実を分からせるよりも、本人のプライドや感情を宥める方が重要だということにようやく気付いたんだ。
そしてあれは、
実家で同居を開始して3ヶ月くらいが経った、ある日の晩ご飯の時のことだったと思う。
※※※※※※※※※※
「おい竜二」
背後の居間の方から親父の声がする。
台所で洗い物をしていた俺が手を止めそちらに行くと、親父が居間の真ん中にある座卓の前で正座していた。
半時間ほど前に同じ場所で一緒に晩御飯を終え、さっき隣の仏間に敷いてある布団に横になったところなのにだ。
ごま塩の角刈りに赤銅色の顔。
上下黒のジャージ。
いつもの風体の親父が少し険しい顔をしながら、脇に立つ俺の顔を見上げる。
「どうしたの?」
と尋ねると、親父は真顔で「お前呑気なこと言ってんじゃねえぞ。
ほら、そこに幸子が座っとるやないか。
はよ酒と晩飯の準備せんか」と言って、正面の誰もいない箇所を指差す。
俺はドキリとした。
貴方が親殺しの大罪を犯す前に、お母様がお父様を迎えに来て、最終的に貴方を護ったのでしょうね。
変わり果てたお母様を目の当たりにしたご心痛はいかばかりかと、言葉が詰まります
こういうのが読みたかった
なぜだろう?涙がこぼれてきた。
すごく心に響きました。
⬆️皆様、暖かいコメントありがとうございます!
─ねこじろうより
母親はあの世からでも自分の子供を守るのですね。
何だか、実家の母に会いたくなりました。
コメントありがとうございます。
母の愛は深いですよね。
─ねこじろう
心にくる話ですね
良いものを読ませていただきました
ありがとうございます。
─ねこじろうより
とてつもない名作。
ありがとうございます。
ねこじろう
ここ最近で一番面白かった
ありがとうございます。
─ねこじろう
母の愛っていいものですよね
それにとてもいい名作
母の愛は海よりも深い、という言葉を思いだしました。
母の愛という観点から読んでいただいた方が意外とおられて、驚いております。
─ねこじろう
名作中の名作。この作品を越えるものは?
ヒトコワで心霊怖くて、そして温かい。これは名作!