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呪い・祟り

rarkさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

徘徊人形
短編 2023/05/29 21:12 4,823view
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「徘徊人形」

中学一年生の正月休み。祖父母の家に、親戚が集まる日があります。大人たちは、真昼間から飲んで、ワイワイしていたのですが、僕と、三つ上のはとこ(兄貴って呼んでいる)は、ゲームも何もないこの家では、かなり退屈だったんです。兄貴と僕は、居間で一人で飲んでいる、叔父に尋ねました。
「なぁなんか面白い事ないの?」
叔父は、「あー」と言った後、
「裏に山あるだろう?あそこに一軒家があるから。あー、後、金出さんによろしくな」
とだけ言って、座布団に寝転んだ後、すぐにいびきをかきはじめました。なんか面白い人でもいんのかな?と思い、「外で遊んでくる。」とだけ言って、僕と兄貴は、その例の一軒家に行く事にしました。十分くらい歩いて一軒家に到着しました。ですが、一軒家は、人の気配がないというか、明らかに空き家です。
「こんなとこに、人なんかいんのか?」
僕は言いましたが、兄貴は、「まぁ、金出さんによろしく。とか言ってたし、人はいるんじゃねーの?」と言って、家のチャイムを鳴らし、
「すいませーん」
と言って、しばらく経ってから

「どうぞ」
と高い声が聞こえました。叔父さんが、事前に連絡してくれたのかな?と思い、僕たちは
「お邪魔しまーす。」
と言って、玄関を開け、家に上がりました。中は綺麗だったのですが、さっきは「どうぞ」と声が聞こえたはずなのに、人の気配はしません。「すいませーん。」
と、言いながら進みましたがやっぱり、反応はありません。今に続く襖を開けると、そこには人の代わりに仏壇と一冊の日記帳がポツンと置いてあります。兄貴は、日記帳を手に取って、僕もそれを覗き込みました。
(1月14日、もう私の息子は助からないだろう。もうあれをやるしかない、
1月15日、〇〇(息子の名前と思われる)を移す事に決めた。息子の隣に人形を置いて、〇〇の両足を切断した。第一段階は成功。
1月16日、〇〇の腕を切り落とす。第二段階は成功
1月17日〇〇の心臓に包丁を入れる。やった!やったぞ!移った!移った!人形に息子の魂が移ったぞ‼︎これ、)
ここで日記は途切れています。そして次のページから、文字の代わりに、真っ赤な血飛沫のもの。僕も兄貴も、あまりにも気味の悪いものを見て僕も兄貴も完全に硬直していました。その瞬間、

「月の暁は荒れやかで荒れやかで〜♪」
民謡のような歌。そして、その声を僕たちは知ってる。そう。さっきチャイムを鳴らした時に聞こえてきた声です。民謡のような歌は段々近づいてきます。その瞬間、居間の扉の前にさっきまで無かったはずの一体の日本人形が、ポツンと置いてあります。人形の顔はかなりヒビが入っていて、口の部分はニィッと気味悪く笑っています。
「月の暁は荒れやかで荒れやかで〜♪」民謡のような歌を歌いながら人形はゆっくり、ゆっくりとこちらに近づいてきます。僕は、
うわぁぁ!と叫び声をあげ、持っていた赤い日記を人形に投げつけました。そして、兄貴が近くにあった椅子で窓ガラスを叩き割り、
「逃げるぞ!」
と言い、僕と兄貴はダッシュで家まで戻りました。兄貴は家に着くなり、叔父さんのところに行き、
「おい、ふざけんなよ。あの一軒家。酷い目にあったぞ!」
と、叔父さんに問い詰めますが、おじさんは首を傾げ、
「なんだそれ?」
と一言。そして叔父さんはずっと祖父と飲んでいたとの事。
そういえば僕も兄貴も、あの時、叔父さんに一軒家の話を聞いた時…

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コメント(3)
  • kamaです。シチュエーションの良い作品ですね。rarkさんのお話は突然知らない言葉が出てきて興味深く読んでます。ここでは「月の暁は荒れやかで荒れやかで〜♪」。
    前作の「ツキミノイシドコロ」もタイトル自体もそうですが、「ワチュラミダ」も不思議な語感で印象深かったです。語彙力を感じます。

    2023/05/30/08:39
  • 投稿者です。 kamaさん!
    ありがとうございます!!

    2023/05/30/19:41
  • こういう外法の儀式めいたもののお話、好きです。呪わしいですね。楽しめました。

    2023/07/09/21:23

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