大雨の留守番
投稿者:白と黒の旅人 (33)
「おい、O、UとCは無事か!?!?」と怒鳴る先代さんに2人は神様の近くにいてもらっているということを伝えた。
ここからが大変。こんな大雨の中、親バカならぬ孫バカをこれでもかとこじらせた先代さんは徒歩で神社に来ようとしだしたのだ。しかも祖父はそれを止めるどころか一緒に来ようとする有様。
ここで強いのが先代さんの奥さん、つまり2人のおばあさん。平手でパンパァン!と2人の老人の頭をしばくと「バカを言ってんじゃあ無いよ!引退したジジイと脳筋のジジイじゃなんも出来やしないよ!Oちゃん、聞こえてるね?」と女傑っぷりを発揮した。
「返事は!?」
「はい!」
こんな感じの会話。ホント怖いんだわこのおばあさん。
「良いかいO!神社の控え室の所に制服(要は巫女さんとかの神社の人が着ているやつ。分かりやすく制服呼びしてくれた。)があるからそれに着替えてきな!」
まるで某アニメ映画の空賊の女性リーダーである。さすがに40秒で着替えることは出来なかったろうが、3分もすれば和服にそれなりに着慣れた人であればきっちり着れるもんである。
「よし、通話はそのままね。今から支持するものを倉から持ってきて、それ持って鳥居の前に行きな!通話そのままでスマホも一緒に持ってくんだよ。ちょっとアンタ!早く準備しな!Oくん既に着替えてんのにアンタときたら……!」
何を見せられてるのか分からなくなったがとりあえず指示されたものを探しに行った。
「20cm四方ぐらいの箱」と指示されたそれは見た目の割に結構中身がスカスカらしく軽い。
「よし、準備出来たね!次はそこにあるその黒いの!」黒いのというのはワイヤレスイヤホンの箱ぐらいの小箱。それも持っていけということらしい。
「準備出来ました。」と言うと先代さんが「よし、今から手順を説明するぞ。まず、鳥居の前に言ってそのふたつの箱を抱えておけ。そしてわしの姿がアレに見えるようにスマホを持て。後はワシが何とかする!」
「えっと…俺が他にやることは?」と聞き返すと次は祖父が「睨んどけ睨んどけ!テメェらなんざ入れねぇ、蛇様に食われちまえとか思っとけ!」となんか喧嘩腰で発破をかけてきた。
文章に起こすとかっこよく言ってるように見えるかもしれないが要は「今からなんかするから見えるお前には悪いが危険な大雨の中逃げずに鳥居の前で奴らにガン飛ばせ」ということを当たり前に言ってくるのだ。マジで怖い。(怖かったからこそ文章に起こせるほど覚えているのですが)
いよいよ決行、時刻は黄昏時を超えてほぼ夜になってきた7時前。
鳥居の前に近づくとアレの正体が見えた。
過去に見たヤバいやつはたくさんの悪いものが集まって出来たものなのだが、今目の前にいるやつは単体、ひとつのものとして独立しているらしい。
凄く分かりにくいが口と歯で身体ができており、舌で体を支えていると言った感じか。
目も鼻も耳もなく、ただ黒々とした塊から口らしき裂け目と綺麗すぎる白い歯、これまた真っ黒な舌がうぞうぞ蠢いていた。
そんなもんを直視し続けたものだから雨で分からなかったが多分失禁したと思う。
しかし、見えないが先代さんが祝詞を唱え出すとなんというか、周りの音がすうっと薄くなっていく感覚がした。
雨の音や雷の音が消えて、目の前もスッキリしてくる。
それと同時にだんだんと目の前の黒いやつによって見えなかった向こう側の景色が見えてきた。
やがてほぼぼーっとしてると目の前からアレは消えていた。
「よし、終わったぞ。」という声がして緊張が解け、その場にへたりこんでしまった。
心配した声をかけられたので画面に顔を見せると「ちょっとOくん!大丈夫か!?」と先代さん。
なんと、私は飛んできた枝がぶつかって側頭部が切れ、出血して首あたりが赤くなっていた。
とりあえず止血しようと思ったのと神様の近くに引っ込んで貰っていた2人の元に戻るためビッショビショのままお社に戻ると「きゃぁぁぁ!!Oさんがぁぁ!!」とUちゃんガチの悲鳴あげて赤ちゃん抱えて全速力で私から逃走スタート。
その後、先代夫婦+私の祖父、そして泥だらけで笑顔で帰ってきた神主夫婦+真ん中の子に応急処置してもらい、その日は病院に行った。
幸い縫う程では無かったが思いっきり風邪をひき38.6℃まで体温が上がった。
風邪をひき、頭に包帯を巻いた状態で2日だけ入院したのだが、入院中、もれなく幽霊を見たのでした。
こういう怖い話好きすぎる
神主一家に纏わる怖い話の投稿ありがとうございます。
御要望ありましたので神主一家さんとガッツリ関わった時のお話投稿いたしました。By投稿者
情景を想像しそうなほどハラハラした。面白い。