「あの、岸川さん、この液体は?」
藤田が尋ねると、岸川は「弊社が独自に作った特製スープです。
これにより食材の臭みが消え、味にコクが出てきます」と答えて全てを流し込み終えると、さっさと蓋を閉じる。
それから先ほどの液晶パネルに数回指でタッチした後、「さあ、これで、セット完了です」と言って最後にもう一度タッチする。
すると「ピ~~~!」というけたたましい電子音がして、無機質な女性の声が聞こえてくる。
「これより高速圧力調理に入りますので、3分ほどお待ち下さい」
「さあ、これで準備完了しました。
後は、出来上がるのを待つだけです」
岸川の言葉の後、藤田が続ける。
「岸川さん、毒島さん、ありがとうございます。
それでは調理が終わるまでに、商品のお値段をご紹介させていただきます。
どんな食材もあっという間にトロトロにするハイブリッド圧力鍋『トロトロくん1号』
この商品は、日常の料理の手助けはもちろん、殺人後の遺体の処理、そして日本の稀少な地方文化の担い手という歴史的な役割まで、幅広くお役に立つこと間違いなしです。
さてお値段ですが、メーカー希望小売価格128万円のところ、今回はホタテ電気さんの暖かいご配慮により、ジャスト100万円、100万円でのご提供ということになりました!」
スタジオ内に大きな拍手が巻き起こる。
「分割も、120回までオーケーです。
しかも只今より30分以内にご注文いただいた方にはもれなく、非力なお年寄りでも簡単に遺体を切断出来る『楽々解体セット』も、お付けします。
こちらのセットに入っている刃物は全て、飛騨高山の刀匠、人間国宝 井原助佐衞文さんの手によるものとなっております」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ユカがテレビ画面から視線を外した時には正面で座っていた男は椅子から崩れ落ち、カーペットの上に横たわっていた。
どうやら完全に意識を失っているようだ。
彼女は一回大きくため息をつくとタバコに火を点け咥えると立ち上がり、男のところまで歩く。
そして頭部に軽く蹴りを入れ、独り言のように呟き始めた。
「オッサン、あんたとの腐れ縁も、もう今日で終わりね。
ホント、あんたには色々と美味しい思いをさせてもらった。
ホントだよ、ホントに感謝してるんだよ。
でもごめん、アタシ新しい男が出来たんだ。
だからもう、あんたは用無し。
ヨ、ウ、ナ、シ!
え?俺をばらしたら、警察に捕まるぞって?
いやいや、世間体を気にするあんたは、アタシとの関係がばれないように、今まで最大級の注意を払ってきたんでしょ。
このマンションの金も車も、如何にもアタシの自己資金から払ったように細工してくれたし、このマンションを出入りするときも、ご丁寧に変装までしてくれていた。
つまり、あんたとアタシの接点は、表向きは、店のキャストと客以上のものはなかったということ。
だから、あんたが、ここでバラされても、誰も気付かないということなの」






















ひぇっt
悪夢の目白押し。短編映画にしてほしいw
結末が意外でした。あ、純真な女性が危険なパパ活なんてやらんか。