「マリにも話を聞いているのかな?」
そう思いながら腕時計に目をやると時間は20時近くになっていた。とんだ一日になっちゃったなぁと何気なく携帯を取り出した。そこでユウジ君は目を疑った。
“圏外”
その二文字を目にして思わず固まった。と同時に思考が頭の中で駆け巡る。
「圏外ってあの爺さんどうやって警察呼んだんだ?まさか電話してなかったとか?いやちゃんと誰かと話していたよな?まさかあれ演技?いやいやちゃんと警察来たよな?
それじゃ圏外なのは俺だけ?いやいや俺ドコモだし電波悪くないし」
混乱しながら携帯から視線をパトカーに向けると若手警官が運転席に乗り込むところだった。
バタン
ドアの閉まる音と同時にエンジンがかかるパトカー。停めている場所でも移すのか?とユウジ君が眺めているとパトカーはゆっくりと走り出した。
「は?」
パトカーは止まる気配なく進んでいく。ユウジ君は無意識のうちにパトカーを追いかけていた。
「マリ!マリ!」
マリさんの名前を必死に呼びながら追いかけるが、当然車には追い付かない。このままじゃマリがどこかに連れて行かれてしまう。自分の車で追いかけるしかない!そう思い踵を返した瞬間、猛スピードで迫りくる車が見えた。
ユウジ君が覚えているのはここまで。
そう、ユウジ君は車に撥ねられ意識不明のまま道端に倒れていた。
たまたまそこを通った人が、倒れているユウジ君を見つけ警察と救急に通報した。全身を強く打ち、寒い山道に長時間放置されたことで一時は本当に危ない状態だった。でも奇跡的に一命をとりとめたって聞いたときは、涙が出る程ほっとしたもんだ。
そのあとのユウジ君は大変だった。入院中とはいえ連日警察の事情聴取を受けるハメになった。ユウジ君は憶えていることを洗いざらい何度も警察に伝えた。警察によればその日に事故の通報は受けていないとのこと。だとすればあの警官と老夫婦は一体何者だったのか?一体何の目的でマリさんを連れ去ったのか?なぜユウジ君たちが狙われたのか?何もわからないまま時が過ぎた。
ユウジ君は1ヵ月程の入院生活を送った後、松葉杖をつきながらだけど無事退院することができた。それからユウジ君は駅前でマリさんの情報を求めるビラ配りをやったり、興信所にあの老夫「林郁夫」なる人物の捜索依頼をしたりとマリさんを必死に自分で探そうとしていた。
「どんなことをしても絶対にマリは探し出す」
俺にこの話をしてくれた最後、こんな言葉で締めくくってた。その決意の固さは本当に命懸けっていうのが伝わってさ。俺も微力ながらユウジ君の手助けをしていたんだ。一緒にビラ配ったり、まだ運転できないユウジ君を乗せて色々な場所を探したり。俺としてもマリさんを見つけてあげたかった。
結婚式の予定日が過ぎた頃だった。
「興信所から林郁夫のことがわかったって電話があったから俺行ってくる」
そう俺に電話をしてきた。そしてこの電話を最後にユウジ君は姿を消した。それから1ヵ月もしないうちだよ、ユウジ君の実家に知らない人が住み始めたのは。ユウジ君の両親は昔から知っているけど、黙って引っ越すような人たちじゃない。本当に礼儀正しい人たちでさ、そんな不義理をするような人じゃないのは俺だけじゃなくて近所の人もが知っている。住み始めた住人は妙に愛想がいい中年夫婦で、どこか笑顔が気持ち悪く感じてしまう。
人怖。
組織?
おつかれさまです
今日Youtube見てたらこの話を朗読してる人が何人もいた。
大町ルートって調べたら北朝鮮に拉致されるとこで有名なとこじゃん
↑拉致されたって事?
↑そうやで。実際に拉致されて事件にもなってた
圏外なのに倒れたユウジくんを発見した人は通報と救急呼べたの?
電波が入るところまで移動したんじゃないの?
作者です。
久々の受賞、それも1&2位フィニッシュを果たすことができました。
怖いに投票してくれた皆様ありがとうございました。
仕事が忙しい時期になってきたので、なかなか作品にかける時間がありませんが、暇を見ては業務の合間でチマチマと書き上げています。これからもよろしくお願いします。
こわー
久しぶりにゾッとしました。
大賞おめでとうございます。
え?これフィクション?
悪くない
気持ちはわかるけど作者コメは萎えるからやめてほしい
良い話なだけに、作者コメ残念すぎる。
いいね
マジこえーよ、バーロー(笑)
心霊話より怖い
めちゃくちゃ精緻で考え込まれた作品だなあとおもいました。素晴らしい話をありがとうございます🙏
最後の一分でゾワッとしたわ