よくわからない女

このあと、別人格が現れるシーンが映し出されるのだが、俺はこれを見て心底恐ろしくなったね。何がそんなに怖いかって？

リエに纏わりつくように幼女、おっさんがどこからともなく出てきたんだ。スーっと画面に現れたんだよ、本当にいきなり。これだけでも十分怖かったんだけど俺がマジで怖かったのはもう一人の女、リエがいう“よくわからない女”の方だ。
いきなりカメラが真っ暗になったと思ったら、一瞬画面がチラついた。何これ？ノイズと思ったんだけど、それが何かのドアップだってすぐに気づいた。眼だよ眼。女の眼球がどアップなんだよ。

よくわからない女がカメラのレンズを覗き込んでた。一瞬チラついたのは瞬きしたからっぽい。女は悪意に満ちたニヤけた表情を浮かべながら、カメラを覗き込んだままゆっくりと離れていき、リエの横に並んだ。
3人がリエを囲むように立ったあと、リエの口が動き出す。幼女とおっさんが言い合うような声は口の動きからやはりリエが発していた。そのうち俺がベッドからゆっくりと下りて逃げる準備を始めるところが映るんだが、よくわからない女は俺に向けて指を指し始める。
気持ち悪い笑みを浮かべて、俺の動きに合わせてゆっくりと体の向きを俺に合わせているんだよ。ニタニタとさ、その悪意は明らかに俺に向けられてるのがはっきりわかった。でも、リエのいうように何を考えてるかわからない。

部屋から出て俺は家に着くまでカメラの存在を忘れていたけど、家についてカメラの電源を切るまで撮影は続けられていた。部屋から出る際に「逃げるなよ」って言葉が聞こえたけどさ、部屋から出て家に着くまでバッグの中だったのにも関わらず、その女の声で

「死ね死ね死ね死ね･･･」

って言葉だけがずっと入っていた。もちろんこんなの恐ろしくてとっておく気にならなかったからすぐに消した。と同時にリエとの連絡先も消した。
あれからリエとは一度も会っていない。もう会うこともきっとないだろう。
リエと会ったとき、必ず帰りはとある住宅街に降ろしていたんだが、リエが歩いていく方向をGoogleマップで調べたことがある。その先にはとっくの昔に閉園された児童養護施設があった。
リエの一件で改めて思ったね、やっぱり出会い系女に深入りしちゃいけないって。ただ、あの3人が何だったのかだけは今でも気になる。