よくわからない女
投稿者:とくのしん (65)
「リエ?」
と声をかけようと思ったが、微動だにせずテレビの前で立ち尽くすリエに違和感を覚えた。
まさか・・・
その嫌な予感は的中する。
「やだ~!無理だよ!」
舌足らずな甘えた声が急に聞こえた。テレビ画面に映しだされているAVビデオの女優が発する喘ぎ声とは明らかに別の声。
「できない!できないもん!」
リエの言っていた別人格の幼女だろう、これが出てきたと俺は理解した。声をかけることもできず俺はただただリエの後ろ姿を眺めていた。
「殺すしかないだろう!」
今度はドスの効いた低い男の怒号が部屋に響いた。その声の低さと大きさにビクッと体が恐怖に反応した。殺せ?殺すしかない?これいよいよやばいんじゃねぇか?
物騒な言葉に俺は戦慄した。
「だからできないよ~!」
「やれ!お前がやれ!」
幼女とおっさんが、一人の女を介して激しく言い争う。相変わらずリエはテレビに向かったまま身動き一つ取らない。俺はリエに悟られないようベッドから静かに下りて最低限の身支度を始めた。
(逃げるしかない)
殺されるかもしれないという恐怖で足に力が入らない。ガクガクする膝に必死に力を入れながら悟られないよう下着を履いてスーツやバッグを抱えて外に出ようとゆっくり後ずさりしながら部屋の出入り口へと向かった。その際、リエの横顔が見えたが無表情で虚ろな目はテレビに向いており、俺に視線が向くことはなかった。
ドア前の自動精算機に一万円を入れる。ご存じの方も少なくないと思うが、この自動精算機、おつりが出てくるのが非常に遅い。札に関しては一枚一枚出てくるのだが、これが非常に時間がかかる。まだかまだかと焦っていると
「逃げるなよ」
幼女でもおっさんでもリエのものでない、女の声が聞こえた。生気の感じられない無機質な声は、明らかに俺に向けられたものだった。精算機前から部屋の中の様子は伺い知ることはできない。覗く気も起きない。ただ、気のせいか?気にしすぎなのか?気配が何となく近づいてきているような感じがあった。足音はしない。だが、気配がゆっくりと近づいてくる・・・迫りくる恐怖に俺はやっと出てきた釣銭を握りしめ部屋を飛び出した。その日はまっすぐ自宅に戻り、一睡もすることなく夜を明かした。
あれから一か月くらいしてリエから
「久しぶり!よかったらまた会わない?久々に顔みたいな」
と連絡が来たが、俺は無視を決め込んだ。あんな思いをするのは二度とごめんだ。
だからあれから一度もリエとは連絡を取っていない。
これが俺が体験した出会い系で一番怖かった話だが、これだけなら単なるヒトコワな話で終わるだろう。だが、この話には続きがある。勿体ぶったわけではないが、もう少しだけこの話に付き合って欲しい。
実はこの日、俺はこっそり自分のバッグに隠しカメラを仕込んでいた。
まぁお楽しみタイムをこっそり撮影して、あとで楽しもうかと思っていたんだ。
ホテルに入って談笑して、シャワーを浴びて先に出てきた俺が、カメラを仕込むところから映像はスタートする。
カメラはベッド横のソファの上に置いた俺のバッグから撮影していた。
リエとの行為のあとの会話、眠りにつくまでは特に何もない普通の盗撮映像。少ししてリエが寝苦しそうに身を捩りだし、ゆっくりと体を起こした。起きたリエは気怠そうにペットボトルの水を飲みほしたあと、ソファ前のテーブルに置いたあったテレビのリモコンを手にしてテレビを点けた。チャンネルをいくつか回し、AVを少し眺めたところで様子がおかしくなる。ボトっと手にしていたリモコンを床に落とし、テレビの前に歩いていく。凝視するように画面にくぎ付けになったあと、ぼーっと立ち尽くした。
もう少しすっきり読みやすく書かれたほうが怖さが伝わる気がします
お疲れさまですw
そんなに、色々な人格が自分のなかにいたら疲れそうですね。
こ、怖すぎ…
んー、出会い系だから仕方ないか。
いいねえ
作者です。
皆さまのおかげで久々の受賞を果たすことができました。
これからも怖いと思われる作品、Youtubeで読んでもらえるような作品を手掛けていきたいと思います。怖いに投票してくれた皆様、本当にありがとうございました。
出会系はメンヘラしかいない、この話は出会系好きの私からしたらホントに真実の話である。
出会い系女の大半がリストカットの跡があるからね。わかりますよ。