時給五万円のバイト

その翌日の月曜日昼のこと。

俺はいつもの学食でいつものランチを食べていた。

大型のテレビ画面ではお昼のバラエティー番組が流れている。

何気に見ていると突然画像が報道スタジオに切り替わった。

若いアナウンサーが深刻な顔でしゃべり始める。

「たった今入ったニュースです。
本日早朝未明、F市M町の埠頭にある倉庫内で港湾労働者が作業中に、身元不明の男女の血まみれの変死体を6体発見しました。
周囲の床や壁も血の海で、凄惨な状況だったようです。

男女は皆全裸で手足を縛られ猿轡をされていて、全員鋭利な刃物で胸や腹を一突きされ絶命していたそうです。
駆けつけた警官により、現場の物陰に隠れていた半裸の若い男が緊急逮捕されました。
発見当初男は何らかの薬物により心神耗弱状態になっており、かつ極度に衰弱しており、全身は血だらけだったらしく、刺身包丁らしきものを胸に抱いてしゃがんでいたそうです。
男は『汝の心のままに』と意味不明な言葉を懸命に繰り返し呟いており、警察では現在身元の確認を、、、｣

汝の心のままに、、、

アナウンサーの言葉が脳内を反響する。

─え、まさか？、、

俺は思わず立ち上がると、テレビの画面に釘付けになったまま思わず持っていた箸を落とした。

正面に座る女子学生が怪訝な目で俺を見る。

アナウンサーは続けた。

「また男の耳にはワイヤレスのイヤホンが差し込まれており、警察は遠隔からのマインドコントロールで男に実行行為を行わせた真犯人がいると見ており、本格的に捜査を進めております」
◆◆◆◆◆◆◆◆

俺は喉裏に激しい心臓の鼓動を感じていた。

そして生暖かい汗が頬をつたうと、顎先からポトリと落ちた。

【了】