愛なき子
投稿者:kana (210)
「あぁ、いっそこのままここにずっといたい・・・」そう思った。
だがそういうわけにも行かなかった。ボクは東京へ帰る支度をしなくてはならない。
「タカシちゃん。心配しなくても大丈夫だよ。お婆ちゃんに任せときな。この子はしっかりと天国に送り届けてあげるよ」
幼子を抱っこしながら婆ちゃんが力強く言ってくれた。彼女はというと、親指をしゃぶりながら婆ちゃんにべったりだ。
「じゃ、婆ちゃん、よろしく頼むね・・・」
「あっ、そうそう、危なく忘れるところだったわ」
ボクは東京に帰るための身支度を一旦止め、一番奥にある婆ちゃんの部屋へ入った。
そこには大きな仏壇があった。
「爺ちゃん、元気でいるかい?」
ボクは仏壇に並ぶ懐かしい顔に挨拶した。
「婆ちゃんも・・・大変世話になりました・・・」
婆ちゃんたちの遺影に手を合わせ、お線香を焚く。
ひとしきりお礼を言って部屋を出る。
荷物を持ち、一人玄関を出る。鍵はポストに入れてイズルさんに電話した。
「ありがとうございました。婆ちゃんにも会えてとってもよかったです」
「あはは、タカシ君またそんな怖い事、言いっこなしだよ! 今度は札幌の方にもおいでよ」
「ハイ、また今度、是非」
バスを乗り継ぎ、1時間半ほどで千歳空港に着く。
飛行ゲートを通る。
今回は来た時のようにピンポンとは鳴らず、スムーズに通ることができた。
ボクは羽田行きに乗り、今回の旅を終えた。
・・・機内で雲を見ながらボクは考えていた。
まるで餓鬼のように腹をすかして貪り食っていたが、亡くなってからも絶えることのない、愛情たっぷりの婆ちゃんの食え食え攻撃に、とうとう餓鬼も退散したわけだ。
おそらく餓鬼にしろ、あの幼子にしろ、本当に飢えていたのは食べ物じゃなく、
愛情だったんだろうな・・・。そう思う。
さて、東京でまた、味気ない日常生活のスタートである。
画像貼り付けが…
切ないけど暖かくなるお話。すごく良かった。
これも施餓鬼供養の一種じゃないかなとも思う。主人公さんGJですよ。
↑kamaです。コメントありがとうございます。そうです。画像貼り付けまた失敗しました。これまでの経験から、話を書いてから張り付けるのと、貼り付けてから話を書いても長々とそこで読み返したり修正とかしていると失敗するみたいです。とほほ。
施餓鬼供養、確かにそうかもしれないですね。今回、餓鬼さんはきっと目を点にして、最後はホクホクの笑顔になって昇天したと思いたいです。
暖かいコメント、みなさまありがとうございます。
正直、泣けました。
↑kamaです。(*´▽`*)にっこり
泣けるのはストレスが溜まっていた証拠かも。
発散しちゃってください。
心の奥から何か感じる。暖かくてほっこりする
ホラーと感動を混ぜるって難しいと思うけどこれ最高。
もっと見たい
週刊ランキング入りおめでとうございます。
kamaです。
↑ありがとうございます。
↑↑難しいですよね。怪談朗読する人にとってはどーゆーテンションで語ればいいのか迷うかもしれないですね。
今後ももう少しだけ、いい感じのと、いい感じじゃないのとを織り交ぜて上げていく予定です。
お楽しみに。
幼子でも、愛を知れた事でしょう。
↑kamaです。コメントありがとうございます。なら天国に行く資格は十分ですね。
同情するなら「満足な食事」を与えてくれってことですね。
こんなことがあったら
そのうちkamaさんかお婆さんのどっちかの守護霊とかになっちゃいそうですね。
2ch名作物語【ゆっくり解説】がYoutubeでこの作品を動画化してるんだが、口の周りにご飯粒いっぱいつけた幼子がかわいすぎて萌えるw
kamaです。本日、大変好評をいただいてますこちらの「愛なき子」の前日譚とも言えるお話、「夏休みに田舎であったこと」(加筆修正版)を公開させていただきました。「愛なき子」の主人公が小学3年生の頃に体験した心霊現象のお話で、おばあちゃんの生前のお話にもなります。ネタバレ防止のために「愛なき子」を先に公開させていただいておりました。
両作品を読まれますと世界観が広がってより楽しめるかと思います。
tanuと申します。前日譚含め、読みました。おばあちゃんの優しさに感動、、、夏の北海道の風景(憧れます。行ってみたい)や、おばあちゃんの料理も目に浮かんでとても楽しめました!
↑kamaです。tanu様、遅ればせながらお礼申し上げます。両作品とも読んでいただき感謝です。
楽しんでいただけたなら幸いです。
ばあちゃんももう亡くなっていたって最後の方まで気づかなかった。
ばあちゃんもその子供も幸せに暮らしてて欲しい