愛なき子
投稿者:kana (210)
幼子も口の周りにご飯粒をいっぱいつけて必死に食べている。
その姿を見てボクは笑いながら泣けてきた。
「本当は、生きてるあいだに味わいたかったよなぁ・・・」
3人だけの大宴会の最中に、婆ちゃんは風呂まで沸かしていた。
「タカシちゃん、お風呂沸いてるから、食べたら入っておいで」
「いやいやとんでもない、ボクは後でいいから、婆ちゃんあの子連れて先に入ってよ」
「そうかい?・・・そうね、あの子をお風呂に入れてあげようかね・・・じゃ行こか」
手をつないでお風呂場に向かう婆ちゃんと幼子。
その間、宴会の後片付けをしておくボク。
風呂場からは二人でなにかの童謡を歌う声が聞こえてきた。
・・・平和だ。
田舎は夜が早い。
ボクが風呂をあがると、もう床の準備も出来ていた。
ボクは布団に入りながら安堵していた。
ついこの間までボクの布団にもぐりこんでいた甘えん坊のおこちゃまの霊は、
今夜は婆ちゃんの布団にまっしぐらだ。
久しぶりにぐっすりと眠った。
・・・・・・
田舎は朝も早い。
お日様が登り始めた頃、台所からは婆ちゃんが朝飯の支度をしている音が聞こえてくる。
「ふぁ~婆ちゃんおはよう」
「ほら、顔洗っておいで。朝ご飯もうできるよ」
あの子もすでに席について待っている。急いで顔を洗って出直してくる。
席に着くと子供が喜びそうな甘く味付けした卵焼きと、厚切りで脂ののったシャケの切り身、昨日の残りのタケノコご飯に、サヤエンドウの味噌汁、そしてキンピラゴボウが出ていた。婆ちゃんの作るキンピラゴボウは東京で売られているものとは全然違う。東京のは細くササガキにしたものだが、婆ちゃんのは大きくて分厚い。端的に言うとゴボウの板みたいだ。
それでいて柔らかく炊けていて、しょうゆベースのタレに漬け込み、それを一晩冷蔵庫で寝かせている。これがもう熱々ご飯と相性抜群で、これだけで何杯もいけるうまさだ。
「あぁ・・・朝からご飯何杯でも食える・・・」
どれもこれも皆うまい。幼子も甘い卵焼きに目をキラキラ輝かせながら食べている。
昨日のイクラの残りもご所望だ。どうやらイクラが大好物になったようだ。
もしかすると、この子にとっては手作りの朝ご飯自体が初めてだったのかもしれない。
うまいうまいとご飯をお替りしつつ、ボクはある異変に気が付いた。
・・・お腹がいっぱいなのである。
ここ数日、どんなに食べても満たされなかったお腹が、普通に満腹感でいっぱいなのである。
お腹もいっぱいだし、なんだが幸せいっぱいなのである。
画像貼り付けが…
切ないけど暖かくなるお話。すごく良かった。
これも施餓鬼供養の一種じゃないかなとも思う。主人公さんGJですよ。
↑kamaです。コメントありがとうございます。そうです。画像貼り付けまた失敗しました。これまでの経験から、話を書いてから張り付けるのと、貼り付けてから話を書いても長々とそこで読み返したり修正とかしていると失敗するみたいです。とほほ。
施餓鬼供養、確かにそうかもしれないですね。今回、餓鬼さんはきっと目を点にして、最後はホクホクの笑顔になって昇天したと思いたいです。
暖かいコメント、みなさまありがとうございます。
正直、泣けました。
↑kamaです。(*´▽`*)にっこり
泣けるのはストレスが溜まっていた証拠かも。
発散しちゃってください。
心の奥から何か感じる。暖かくてほっこりする
ホラーと感動を混ぜるって難しいと思うけどこれ最高。
もっと見たい
週刊ランキング入りおめでとうございます。
kamaです。
↑ありがとうございます。
↑↑難しいですよね。怪談朗読する人にとってはどーゆーテンションで語ればいいのか迷うかもしれないですね。
今後ももう少しだけ、いい感じのと、いい感じじゃないのとを織り交ぜて上げていく予定です。
お楽しみに。
幼子でも、愛を知れた事でしょう。
↑kamaです。コメントありがとうございます。なら天国に行く資格は十分ですね。
同情するなら「満足な食事」を与えてくれってことですね。
こんなことがあったら
そのうちkamaさんかお婆さんのどっちかの守護霊とかになっちゃいそうですね。
2ch名作物語【ゆっくり解説】がYoutubeでこの作品を動画化してるんだが、口の周りにご飯粒いっぱいつけた幼子がかわいすぎて萌えるw
kamaです。本日、大変好評をいただいてますこちらの「愛なき子」の前日譚とも言えるお話、「夏休みに田舎であったこと」(加筆修正版)を公開させていただきました。「愛なき子」の主人公が小学3年生の頃に体験した心霊現象のお話で、おばあちゃんの生前のお話にもなります。ネタバレ防止のために「愛なき子」を先に公開させていただいておりました。
両作品を読まれますと世界観が広がってより楽しめるかと思います。
tanuと申します。前日譚含め、読みました。おばあちゃんの優しさに感動、、、夏の北海道の風景(憧れます。行ってみたい)や、おばあちゃんの料理も目に浮かんでとても楽しめました!
↑kamaです。tanu様、遅ればせながらお礼申し上げます。両作品とも読んでいただき感謝です。
楽しんでいただけたなら幸いです。
ばあちゃんももう亡くなっていたって最後の方まで気づかなかった。
ばあちゃんもその子供も幸せに暮らしてて欲しい