愛なき子
投稿者:kana (210)
実家が見えてきた。子供の頃によく遊んだ町営プールがすぐ隣にあったはずなのだが、
今はなくなって倉庫のようなものが建っていた。ちょっと残念。
イズルさんから教えてもらった通り、ポストから玄関のカギを取り出して、ドアを開ける。
そこには、昔に比べると随分ボロくなったものの、変わらないつくりの間取りがあった。
ボクは大きな声で「ただいま~」と叫んだ。実家である。間違いではないはずだ。
「婆ちゃん、いるかい~?」と奥に向かって叫びながら靴を脱ぐ。
すると、廊下の一番奥からスタスタと小気味よい足取りで婆ちゃんが現れた。
背筋もピンとしており、健勝な姿を見てうれしくなった。
「婆ちゃん、元気そうでなによりだね~」
「タカシちゃんかい、大きくなったねぇ」
・・・ふふ。まだ子ども扱いみたいなことを言ってくる。
「あれま、その子どうしたのさ? おまえの子かい?」
やっぱり婆ちゃんにはこの子がちゃんと見えるらしい。
「・・・その事なんだけど・・・」
荷物を居間に運びながら、ボクは婆ちゃんにこれまでの事を説明した。
「そうかい、じゃ今晩は腕によりをかけてごちそう作らなきゃだね。そうだ、今おやつ作ってあげるからね」
そう言ってさっそく台所に立ち始めた。「いいよ」と言いたいところだけど、ボクもお腹が減っている。夜までにおやつくらい食べてもバチは当たらんだろうと思って待つことにした。
幼子の霊は婆ちゃんが何をするのか興味津々のようで、さっそく台所に走って行って婆ちゃんの横にくっついていた。
・・・なんだ、こうして見ると昔から知っている孫と婆ちゃんのようじゃないか。
ふたりの姿をなんだかほっこりしながら眺める。
「ハイできたよ」
婆ちゃんが大皿に盛って来たのは出来立てほやほやの自家製ポテトチップスだった。
北海道の採れたてじゃがいもをスライスして揚げて軽く塩を振ったシンプルなものだ。
「いただきま~す」そう言ってパクつく。幼子も小さな指でつまんでそれを食べる。
「うっま!! これうまいわ~婆ちゃん!」
コンビニで買うポテトチップスとは明らかに違う。出来立て熱々のポテチは最高の味だった。
「ビールも欲しいけど・・・さすがにまだ早いか」
「婆ちゃん、今晩の材料とかビールとか、買い出しに行ってくるから、ちょっとだけこの子の面倒見てて」
女の子は少しだけ不安そうな顔をしていたが、すでに婆ちゃんが抱っこして抱え込んでいる。
「いってらっしゃい。じゃ、これも買ってきてくれる?」
婆ちゃんから買い物リストのメモを渡される。なかなかの量だ。
画像貼り付けが…
切ないけど暖かくなるお話。すごく良かった。
これも施餓鬼供養の一種じゃないかなとも思う。主人公さんGJですよ。
↑kamaです。コメントありがとうございます。そうです。画像貼り付けまた失敗しました。これまでの経験から、話を書いてから張り付けるのと、貼り付けてから話を書いても長々とそこで読み返したり修正とかしていると失敗するみたいです。とほほ。
施餓鬼供養、確かにそうかもしれないですね。今回、餓鬼さんはきっと目を点にして、最後はホクホクの笑顔になって昇天したと思いたいです。
暖かいコメント、みなさまありがとうございます。
正直、泣けました。
↑kamaです。(*´▽`*)にっこり
泣けるのはストレスが溜まっていた証拠かも。
発散しちゃってください。
心の奥から何か感じる。暖かくてほっこりする
ホラーと感動を混ぜるって難しいと思うけどこれ最高。
もっと見たい
週刊ランキング入りおめでとうございます。
kamaです。
↑ありがとうございます。
↑↑難しいですよね。怪談朗読する人にとってはどーゆーテンションで語ればいいのか迷うかもしれないですね。
今後ももう少しだけ、いい感じのと、いい感じじゃないのとを織り交ぜて上げていく予定です。
お楽しみに。
幼子でも、愛を知れた事でしょう。
↑kamaです。コメントありがとうございます。なら天国に行く資格は十分ですね。
同情するなら「満足な食事」を与えてくれってことですね。
こんなことがあったら
そのうちkamaさんかお婆さんのどっちかの守護霊とかになっちゃいそうですね。
2ch名作物語【ゆっくり解説】がYoutubeでこの作品を動画化してるんだが、口の周りにご飯粒いっぱいつけた幼子がかわいすぎて萌えるw
kamaです。本日、大変好評をいただいてますこちらの「愛なき子」の前日譚とも言えるお話、「夏休みに田舎であったこと」(加筆修正版)を公開させていただきました。「愛なき子」の主人公が小学3年生の頃に体験した心霊現象のお話で、おばあちゃんの生前のお話にもなります。ネタバレ防止のために「愛なき子」を先に公開させていただいておりました。
両作品を読まれますと世界観が広がってより楽しめるかと思います。
tanuと申します。前日譚含め、読みました。おばあちゃんの優しさに感動、、、夏の北海道の風景(憧れます。行ってみたい)や、おばあちゃんの料理も目に浮かんでとても楽しめました!
↑kamaです。tanu様、遅ればせながらお礼申し上げます。両作品とも読んでいただき感謝です。
楽しんでいただけたなら幸いです。
ばあちゃんももう亡くなっていたって最後の方まで気づかなかった。
ばあちゃんもその子供も幸せに暮らしてて欲しい