愛なき子
投稿者:kana (210)
ボクはイズルさんの置いて行ったクルマのキーを借りて、軽自動車のある車庫に向かった。
「行ってきま~す」
・・・・・・
その日の晩ご飯は、とても豪勢なものになった。ボクと婆ちゃんと幼子の霊の三人しかいないというのに、まるで親戚一同が集まった大家族の宴会のように料理が並んだ。
まずは何と言ってもジンギスカンだ。ここN町はジンギスカンが有名で、とくに町で行っているリンゴ栽培を活かして、タレにもリンゴを使い、甘辛く漬け込んだジンギスカンが最高にうまいと評判なのだ。その地元自慢のジンギスカンをいただく。
婆ちゃんが小皿にとって幼子に食べさせる。
「どうかな~食べられるかい? ハイあ~んして」
パクっと一口食べて、女の子の表情がパァっと明るくなるのが判った。リアクション最高や。なんだか一歩人間に近づいたような気さえする。
たぶん幼子は生まれてこの方ジンギスカンなど食ったこともないだろう。それなのに、初めて食べるジンギスカンがN町のジンギスカンとは・・・舌が肥えてしまいそうだ。
「プハァ~」ビールもうまい。
「白飯とタケノコご飯も作ってあるよ」と婆ちゃん。
なんという贅沢。ご飯が二種類(笑)
まずは白飯をもらう。婆ちゃんの白飯はもち米を炊いて作っている。あの粘りが好きらしい。つやつやの白いご飯を、幼子も大きな口を開けて食べている。もう安心しきっているのか、元気な食べっぷりで清々しささえある。
「イクラあるよ。食べるかい」
婆ちゃんがレンゲで掬って食べさせる。
またまた笑顔がこぼれる幼子。
「この子、完全にグルメになっちゃうわ」ボクが冗談で言う。
「毛ガニあるよ」婆ちゃんが持ってくる。
オイオイ、いったいどれがメインディッシュなんだ??
「タラバの足、天ぷらにしたんだけどどうかな?」
御馳走が止まらない。
「ほれ、もっと食え。若いモンがこれくらい食えないでどーすんのよ」
婆ちゃんがガンガン食え食え攻撃してくる。
そしてそんな御馳走の山がいったいどこへ消えるというのか、ボクも婆ちゃんに応えるようにどんどん食べていく。
最後の〆にせっかく用意してくれたタケノコご飯を頂くことにした。
これはボクが子供の頃に大好物だったのを婆ちゃんが覚えてくれていたのだろう。
幼子に、というよりボクのために作ってくれた逸品だ。
婆ちゃんの作るタケノコご飯は東北地方でとれる「ネマガリダケ」を使う。「姫竹」とか「チシマザサ」とも呼ばれ、本当はタケノコとは違う品種らしいのだが、味も食感もタケノコとよく似ており、東北・北海道でタケノコと言えばこのネマガリダケのことを言う。
個人的な感想ではあるが、ネマガリダケの方がタケノコよりも数倍うまいと思う。
そして、本当はここに「身欠き(みがき)にしん」が入るのだが・・・子供時代のボクが身欠きにしんを嫌って避けて食べていたせいで、それ以来婆ちゃんのタケノコご飯には身欠きにしんではなく鶏肉が入っている。
甘辛く、香ばしいタケノコごはんは、もうそれだけで何杯でもいける。
画像貼り付けが…
切ないけど暖かくなるお話。すごく良かった。
これも施餓鬼供養の一種じゃないかなとも思う。主人公さんGJですよ。
↑kamaです。コメントありがとうございます。そうです。画像貼り付けまた失敗しました。これまでの経験から、話を書いてから張り付けるのと、貼り付けてから話を書いても長々とそこで読み返したり修正とかしていると失敗するみたいです。とほほ。
施餓鬼供養、確かにそうかもしれないですね。今回、餓鬼さんはきっと目を点にして、最後はホクホクの笑顔になって昇天したと思いたいです。
暖かいコメント、みなさまありがとうございます。
正直、泣けました。
↑kamaです。(*´▽`*)にっこり
泣けるのはストレスが溜まっていた証拠かも。
発散しちゃってください。
心の奥から何か感じる。暖かくてほっこりする
ホラーと感動を混ぜるって難しいと思うけどこれ最高。
もっと見たい
週刊ランキング入りおめでとうございます。
kamaです。
↑ありがとうございます。
↑↑難しいですよね。怪談朗読する人にとってはどーゆーテンションで語ればいいのか迷うかもしれないですね。
今後ももう少しだけ、いい感じのと、いい感じじゃないのとを織り交ぜて上げていく予定です。
お楽しみに。
幼子でも、愛を知れた事でしょう。
↑kamaです。コメントありがとうございます。なら天国に行く資格は十分ですね。
同情するなら「満足な食事」を与えてくれってことですね。
こんなことがあったら
そのうちkamaさんかお婆さんのどっちかの守護霊とかになっちゃいそうですね。
2ch名作物語【ゆっくり解説】がYoutubeでこの作品を動画化してるんだが、口の周りにご飯粒いっぱいつけた幼子がかわいすぎて萌えるw
kamaです。本日、大変好評をいただいてますこちらの「愛なき子」の前日譚とも言えるお話、「夏休みに田舎であったこと」(加筆修正版)を公開させていただきました。「愛なき子」の主人公が小学3年生の頃に体験した心霊現象のお話で、おばあちゃんの生前のお話にもなります。ネタバレ防止のために「愛なき子」を先に公開させていただいておりました。
両作品を読まれますと世界観が広がってより楽しめるかと思います。
tanuと申します。前日譚含め、読みました。おばあちゃんの優しさに感動、、、夏の北海道の風景(憧れます。行ってみたい)や、おばあちゃんの料理も目に浮かんでとても楽しめました!
↑kamaです。tanu様、遅ればせながらお礼申し上げます。両作品とも読んでいただき感謝です。
楽しんでいただけたなら幸いです。
ばあちゃんももう亡くなっていたって最後の方まで気づかなかった。
ばあちゃんもその子供も幸せに暮らしてて欲しい