正しい首の締め方

そこで目が覚めた

目覚めてまず感じたのは、恐怖ではなく違和感だった

首の締め方と少年の死に様があまりにも具体的過ぎだ、と感じた

気になって調べてみると、首を絞めて殺された死体は、顔面が鬱血（赤黒く変色）し、目の血管が破裂して眼球が赤くなるらしい

自分には全く覚えのない知識だった
サスペンスドラマやホラー映画なんかでも、締め殺された死体は特に変色もせず綺麗なもので、実際の死体もそう大して変わらないだろう、と思っていた
少なくとも、目の血管が破裂、なんてことは思いもよらなかった

それに、血管が絞まって気持ちいい、とはどういうことかよくわからなかったが、調べていくうちに、柔道の絞め技で『落ちる』と、まるで天国に上っていくような独特の気持ちよさを感じることがあるらしい、と知った

夢というのは、起きている時の出来事を脳内で整理する過程で再生されるものだと言われている
自分は一体どこでこんな知識を見知ったのか、全く見当もつかない

それに、血管を潰す感覚があまりにもリアルだった
試しに自分の首に手を掛けてみると、まさしく夢で感じたような手触りでゾッとした

ひょっとしたら自分は、潜在的に人を絞め殺したいという願望を秘めているのではないか
そのための知識を知らず知らずのうちに習得し、来たるべき機会に備えて脳が準備を進めているのではないか

いや、もしかして自分に限った話ではないのではないか？
誰しもが持つ願望なのではないか？

自分は自覚のない猟奇的な人間なのか

あるいは

人間誰しも潜在意識の下で、他者を排除するための方法を研鑽しているのか

自分にはわからなかった