変なアルバイト「池の掃除」
投稿者:赤壁二世 (13)
「うわっ、気持ちわる」と池の外に放り投げた。
それを見てた先輩が「虫でもいたか?」と聞いてきたので、「なんか、すごい量の髪の毛ありました」と、放り投げた物体を指さす。
先輩はスコップの先端を使って器用にその塊を解すと、やっぱり人の髪の毛のようなものが広がる。
「それ髪の毛ですよね。しかも人の…」
俺がそう言うと、先輩は少し考えるように沈黙し、すぐにこう告げた。
「何かの動物のだろ。気にすんな」
いや、さすがにどう見ても人の髪の毛にしか見えないと俺は先輩の顔を二度見する。
だが、先輩は「いいから作業続けてくれ。早く帰りたいだろ?」とにべもなく指示を飛ばす。
俺は仕方なく作業を続けるが、その後も髪の毛の塊が出るわ出るわ。
明らかに人毛と思しきものが泥の中から出てきた。
しかし、俺が「やっぱこれ…」と先輩に何か言おうものなら、先輩は「いいから黙ってやれ」と、普段温厚な態度が一変した口ぶりで何も言わせないのだ。
さすがにこの池が何かヤバい事に使われているのではと勘繰るわけだが、髪の毛以外には怪しいものは出てこなかった。
例えば、人骨とか、そういうのは出ない。
だが、Aが発掘したように指輪が幾つも埋まってたのが気になり始めた。
池の泥掃除が終わった後、山を少し上ると上流があり、そこに外れたパイプ菅がある。
池に水を貯めるには、このパイプ菅を通して上流の川の水を流し入れるか、自然の雨水を貯める必要があり、俺たちは先輩の指示で上流まで足を運び、このパイプを川に差し込んだ。
これにより池に川の水が流れつくわけだ。
この時、先輩は作業があるからと一人池に残っている。
そこで俺は友達に髪の毛の話をした。
「なあ、俺、配管周りの泥掃除してたんだけど、髪の毛出てきた」
俺がそう告げると、意外にもAもBも「お前も?」「俺も」と同じ意見だった。
ただ、二人とも俺と違って先輩の人柄とか知らないから、俺にも内緒にして二人でこのアルバイトがヤバい案件なんじゃないかと話し合ってたそうだ。
「もしかして死体遺棄とかした後の事後処理やらされてんじゃね?」とAは言うが、指輪と髪の毛が出てきただけでそれは勘繰りすぎではと思った。
どっちにしろ、あまりこの事については先輩に追及しない方がいいと思い、俺たちはバイトが終わるまで黙々と作業を続ける事にした。
ちなみにこの段階で不安を感じてた二人は拾った指輪を川に投げ捨てた。
上流から水を送ると、次は池に戻って流れてくる水と一緒に残ったヘドロをゴシゴシと磨き、排水に流す。
そんな作業をしながらふとほとりを見渡すと、先輩はワゴン車にもたれかかるようにして誰かに電話してた。
時折、俺が掬い上げた泥の塊、髪の毛がある泥の山を見ながら、神妙な面持ちで電話先の相手と話し、偶に俺たちの方を向く。
だから俺たちはサッと視線をそらして作業に没頭した。
何か生きた心地がしなかった。
kamaです。いいですね。ゾクゾクしました。
面白かった
闇が深いな
読みやすいです。ひきこまれました。
うーん。オチが欲しかったなー