変なアルバイト「池の掃除」
投稿者:赤壁二世 (13)
「水抜きするからこれ引っこ抜くの手伝ってくれ」
先輩がこれと指さすのは、水面からひょっこりと飛び出した直系三十センチ未満の穴が開いた円筒形の配管。
この池は、山の上流からあふれる水や雨水を貯めこんでいるらしく、一定量に達するとこの配管から河流に流れる仕組みで水量を調節しているらしい。
池の中から飛び出した配管と合体している接続パーツがあるそうで、この筒を抜けば8割方は池の水が水底の排水口から流れ出るそうだ。
ただ、池に沈殿した泥も一緒に流れるから詰まる前に掬いだす重労働が伴う。
例のごとく、先輩は地上から配管の縁を掴み、俺は池に入って筒の全体を抱えて引っこ抜く。
使われる立場の辛さを実感するが、それよりも随分と固くはめ込まれているのか、踏ん張っても一向に抜ける気配がしないことに意識がもっていかれる。
「もっと踏ん張れるか?」
先輩は芋を引き抜くような恰好で訊ねてくる。
先輩の態勢も腰をいわしそうだが、俺もヘドロでぬかるんだ水底で何とか踏ん張り「ぐぬぬ…!」と気合をいれた。
すると『ボン』とくぐもった音と共に配管が抜け、一気に水が排水口に雪崩れ込み水嵩が下がる。
吸い寄せられるように落ち葉なんかが俺の体に集まってくるが、先輩は慌てて「これこれ、これ使って」と虫取り網みたいなのを渡してきた。
またまた先輩は地上から網で流れ込んでくる葉っぱなんかを回収し、俺は池の中で回収を始める。
排水口を背にした俺の懐に勝手に集まってくれる分、結構楽だった。
だいぶ水嵩が低くなった頃合いにAとBがやってきた。
「こっち終わりました」
先輩は「お疲れさん、じゃあこれで泥を掻き出すの手伝ってくれ」と、人数分のスコップを手渡す。
膝下くらいになった池だが、足を踏み入れると脛ほどの泥を体感する。
まさか、これを全部掬いだすのか。
友達も池に足を踏み入れた段階でその途方もない作業に感づいたのか、「マジか…」と絶望した顔をしてた。
それから殆ど無言で泥やヘドロを池から掬い上げる作業が続いた。
腰が痛いし、掌も痛い。
というか、スコップの持ち手に触れる手の関節が擦れて痛い。
たまに池の外に掬った泥を放る際に勢いが足りず池にベチャッと落ちた時、泥水が顔に撥ねる。
全てが不快で大変だった。
「お、なんだコレ」
そんな時、Aが何かを見つけた。
スコップで持ち上げた泥の中に、光り輝く何かがあり、Aはそれを泥から摘み上げて池の泥水で洗い流す。
指輪だった。
「指輪だ」
kamaです。いいですね。ゾクゾクしました。
面白かった
闇が深いな
読みやすいです。ひきこまれました。
うーん。オチが欲しかったなー