誰も知らない転校生
投稿者:へぴょ太 (5)
私がまだ小学生だった頃の話。病弱で学校を休みがちだったのだが、初めて入院したのは六年生で修学旅行の十日前だった。
入院するよりも前に、修学旅行のグループは決まっていて、あとは行くだけだった。
学校を休むと宿題や手紙を、近所に住むクラスメイトがいつも持ってきてくれていた。
決まった人ではなかったが、持ってきてくれるのは3人いた。
しかし、この入院生活の間手紙を持ってきてくれたのは会ったこともない同級生だった。
私が入院中、家に来て手紙と花を毎日持ってきてくれた子がいた。母は「男の子が持ってきてくれたよ」としか言わなかったので、私はいつも来てくれているK君だと思っていた。
K君は幼稚園からの付き合いで、家も近所で親同士も仲がいいのだ。
母が渡してきたのは学校の配布物ではなく彼の書いた手紙だった。
「はやく元気になって、しゅうがくりょこう いっしょに行こう!」
と書かれていた手紙に名前はなかった。
そして手紙には道端で拾ったであろうタンポポが添えてあった。
K君が花をくれた事に驚いたが、入院している私にお見舞いの花のつもりなんだろうと思った。
また次の日もその次の日も、K君は手紙と花を届けてくれた。
手紙の内容はいつも同じ。
「はやく元気になって、しゅうがくりょこう いっしょに行こう!」と自由帳を破いて書いた手紙と道端の花。
花はタンポポの他にもマーガレットや名も知らない紫の花などがあった。
退屈な入院生活だったが、毎日届く花が楽しみだった。
その花を眺めながら、修学旅行の事を考えるのが唯一の楽しみになったのだ。
針を外されることもなく続いた点滴のおかげか、私の入院生活は約一週間で済んだ。
修学旅行間近だという事をきいた看護師さんが先生に掛け合い、退院が早まったのだ。
修学旅行の三日前の事だったが、これで皆と一緒に修学旅行に行けると思い、嬉しかったのを今でも覚えている。
退院した次の日、久しぶりに学校へ行くと私はおかしな事に気が付いた。
毎日手紙と花を持って来てくれたのはK君ではないというのだ。
いつも手紙を持ってきてくれる三人の中に、男の子はK君一人。
母は男の子が持ってきてくれたいうので、なんの疑いもなくK君だと思っていた。
K君にお礼を言ったら、自分ではないと言われたのだ。
それどころか、私が入院中の一週間は、家庭の負担になるからという理由で、担任は配布物などは誰にも一切頼んでいないというのだ。
そう言われると、配布物や宿題を持ってこられたわけではない。
手紙と花だけなのだ。
ではいったい誰が持ってきてくれたのだろうか。
クラスで話題になったが誰も名乗り出る人はいなかった。
(ノД`)やさしいこころ
いい話だな
不思議な、できごとだけど嬉しいかな。