奇々怪々 お知らせ

心霊

Neffy6さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

出たかったんだね
長編 2023/03/28 21:44 1,701view
0

私には幼稚園から一緒の腐れ縁の友人Nがいた。いつも馬鹿なことばかりしていた。

Nと一緒にやっていたのは野球。少年野球チームに一緒に所属していた。

その地域では一番強いチームでNはキャプテン。私は補欠。小学生で170cmもあるNは中学校の先輩からも次期キャプテンよろしくなと将来も約束されていた。私とは全く比較にならないほどの絵に描いたような野球少年だった。

6年生になったある日、Nはいきなり学校を休んだ。どうしたんだろうと思い、私は友人宅へ行った。おばさんがしばらく入院すると、どうやら病気らしい。でもなんの病気かはわからなかった。

1か月後友人は学校に来ていた。どうしたの?友人は笑顔でなんか頭が痛くなって休んでいたと、そうなんだよかったと安堵。しかし、その後、Nからお医者さんからは今後激しい運動はできないといわれたと言った。だから中学では野球はやらないって。

えっ?あれだけ期待されていた野球をやらないの?ちょっとびっくりした。そして、Nは”俺、中学で音楽やるわ”いきなりのカミングアウトにちょっとびっくりしたけど、私は”じゃあ俺も楽器やるかな?トランペットとか?”Nも”じゃあ俺ギターやる”ってお互い笑顔で見つめあった。

私はその時はまだNの病気のことはわかっていなかった。それから月日が流れ、私たちは中学校に入学し、私はテニス部に入部、Nは軽音楽部とはいっても吹奏楽部しか認められてなかったため、一人同好会だった。

彼はめきめき実力をつけて学校祭で演奏するくらいすばらしいギタリストになっていった。お互い中学校を卒業して、高校も同じ高校に入学。

Nは高校の軽音に入部し、本格的にミュージシャンの道を目指すことになった。私は結局テニスも中途半端になり、帰宅部となった。

高校1年の冬、学校に行こうとN宅へ、出てきたのはお母さん、家に入ってと言われ中に入った。Nのお母さんから彼の病気について説明された。脳内の動静脈奇形という難病で今回もその影響で出血し入院。一時生死をさまよったほどの状態だった。

数か月後Nは奇跡的に治してて帰ってきた。今回は本当に奇跡だったと後からNのお母さんから聞かされた。高校生活はなんとか病気の悪化もなく卒業、お互い大学に行き、それぞれ違う道を進み始めた。

Nはミュージシャンを目指し大学の軽音に入り毎日精力的に練習していた。その技術は周りも認めるくらいのギターテクニックだった。大学2年生になりNから電話があって自宅に遊びに行った。Nの部屋には大事そうに飾っていた真新しいギターが。10月の学校祭のコンサートのために買ってもらったと、嬉しそうに笑っていた。

残暑が残る、8月お盆過ぎ、私は爆睡していた、”ウィーン”というモーター音。その音に気付いてTV付近に目をやると時刻は5時30分、ビデオが動いていた、ん?なんで?リモコンを手に取るとそれを止めた。

早送りされた?なぜ?もし、消し忘れて、つけっぱなしだとビデオは巻き戻して最初に戻る機能がついている。早送りは意図的に操作しないと動かない。

壊れた?そう思ってまた、布団に入り目を閉じる。2時間くらい寝ただろうか、下の階から姉からの声が、”電話だよ”まじ、時計を見ると朝7時30分。

誰?電話に出た、電話は高校からの友人Tだった、“はい、どうした?”私は早朝の電話でちょっと不機嫌に話した、受話器から聞こえたのは“Nが今朝死んだよ”はじめ何言っているのかわからなかった。“はっ?”ちょっと語気を強めて“何言ってるの?”その瞬間私は号泣していた。

わたしの頭にはいつかこんなことがあるんじゃないかと思っていた。“今すぐ行くから”と言って電話を切りすぐにN宅に行った。そこには先ほど連絡をくれたTと同じく高校からの友人のSがNの横に座っていた。

ただ、力なく私はそこに座った。10分くらいNの顔を見ていた。涙は枯れていた。Nは3日前に学祭の練習をしていた時、すべての曲を弾き終わったあと、座り込むように倒れたそうだ、バンド仲間が家に連れて帰ってお母さんがNの名前を言って手を握った、Nは最後の力を振り絞り少しだけ握り返して、お母さんの手から落ちた。その後病院に運ばれ、治療を施したが、その甲斐なくNはなくなった。

死亡時刻は朝5時30分だった。それを聞いたとき思わず今朝のビデオのことを皆に話をした。そうしたらTは同時刻にTVがいきなりついたと、Sはいつも7時にセットしている目覚ましが5時30分になったといった。

Nは仲の良かった3人に最後のあいさつに来ていたのだ。その時また目を押さえた。翌日通夜、葬儀が行われNは天国に行った。

それから10月10日に学校祭が行われ、Nが出るはずのコンサートは追悼コンサートとして実施された。結局、Nが引くはずのギターはステージ中央奥に飾られてコンサートを見守っていた。

2時間ほどのコンサートが終わり、私たちは居酒屋でNの話で一晩中盛り上がっていた。2週間後Nのお母さんから写真ができたからみんなで来てと言われ、N宅に行った。すでにTは来ていた。

Nのお母さんからこの前のコンサートの写真と言われ手にした。数十枚の写真を手に取り一枚一枚思い出すように見ていた。コンサートの写真を見ていた時、Nのギターが写っていた写真があった。そのギターの最前列にTシャツ姿の坊主姿の男の人が座った写真。

Tシャツはその当時はやっていた特徴あるTシャツ、それ見たとき、そういえばNも同じTシャツいつも着ていたっけと思った。

次の写真に行こうと思った瞬間、“え?え?え?”頭の中がパニックになる。たしか、あの時前3列の席は座れないよに柵があった。だれも座っていなかった、これは誰?見たことあるTシャツ、坊主頭、Nは開頭手術で坊主だったはず。

すべてが合致した。頭の中でNだ!そう思った。手が震えた。その時Nのお母さんから“いるでしょ、よっぽど出たかったんだね”と私に言った。

Tも見たとき私と同じリアクションをしたそうだ。その後、来たSにも写真見せたら全く同じリアクション。

これは心霊写真なの?いや、Nの記念写真だよってお母さんから言われて私たちはNの遺影を見て笑った。 

1/1
コメント(0)

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。