俺が幼稚園から中学生くらいまで、近所に「謙三」さんってお爺さんが住んでたんだ。
通学路に面した古びた家の庭先からいつも通る子供たちや近所の主婦たちににこやかに挨拶してたから優しいと評判の人だった。
そんな謙三爺さんは、いつも学校帰りの子供たちにお菓子をくれたんだ。
飴、クッキー、饅頭、ケーキなど毎回違うお菓子をくれるから子供からは大人気だった。
ところが、俺が中学3年になってすぐのころ、謙三爺さんは病気で亡くなったんだ。
そりゃあ悲しかったよ、俺の爺ちゃん婆ちゃんは住んでるとこが遠かったからめったに会えなかったし、何より謙三爺さんの笑顔が見れなくなったのがショックでね…俺の母さんも、あんないい人が亡くなったって悲しんでた。
ところが、謙三爺さんには身寄りがなく親類とも連絡がとれなかったらしく、近所の人たちで少しずつお金出し合って無縁仏へ埋葬したんだ。
そして謙三爺さんの遺品を整理する為、役場の人や近所の人たちで謙三爺さんの家に行ったそうなんだけど、その家が奇妙な状態だったそうだ。
まず電気、ガス、水道といったライフラインが全て止まってた。
役場の人が調べたらもう何年も止まったままって事がわかった。
確かに…謙三爺さんの家に夜灯りが灯ってるのを見たことはなかった…
また、何かを食べたり飲んだりした形跡も全く見当たらず、生活感のあるものといえば、いつも謙三爺さんが座ってた座布団くらいだった。
何故謙三爺さんがライフラインが全て止まった家で何年も生きれたのか
子供たちに配っていたお菓子はどうやって手に入れたのか…謙三爺さんが亡くなった今では知る術もない…
それから俺は全寮制の高校へ進学が決まり街を出たのだが、こないだ数年ぶりに実家に帰った。
その道中、あの謙三爺さんが住んでた家の前を通った。
驚くことに家は取り壊されず半ば廃墟のような状態で残っていた。
そして…家の2階からこちらを見ている誰かがいることに気付いた。
それは…亡くなった謙三爺さんだった。
俺は背筋に冷たい汗が流れたのを感じたが、金縛りにあったように動くことが出来なかった…
そして、ゆっくりと誰かが階段を降りる音が聞こえてきた…
すぐにその場から全速力で逃げて実家に帰ってからは謙三さんの家の前を通ることもなく数日後には寮に戻った。
あの時、階段を下りる何者かを待っていたら俺は何に出くわしていたのだろうか‥
























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